2006 SPARTATHLON 
   (スパルタスロン ΣΠΑΡΤΑΘΑΟΝ)

 2006/9/29〜30 ギリシャ・アテネ→スパルタ (245.3km 制限時間36時間)
  結果: 27時間38分 7位

 大会公式HP : http://www.spartathlon.gr/ (ギリシャ語、英語)
 日本語HP : http://www.r-wellness.com/spartathlon/index.html

 ギリシャ写真アルバム : http://www.geocities.jp/matsutake_spartathlon/photo/catalog.html

スパルタスロンとは・・・

 世界で一番過酷なウルトラマラソンとも言われ、ギリシャのアテネからスパルタまでの245.3kmを制限時間36時間以内に走るという大会です。多くのランナーの憧れの大会でもあります。2006年の出走者は約250人、日本人が一番多くて60人くらいです。大会について詳しくは、去年の完走記をご覧ください。 →2005年完走記はこちら

2006スパルタスロンに向けて

 今回でスパルタスロン参加は2回目です。初参加した去年の感動や楽しさが忘れられず、また参加することにしてしまいました。去年は、一度完走できたらしばらくやめにすると言っていたのに。

 参加するからには、前回よりは速く走りたいと思った。そこで大会前の2、3ヶ月を走り込み期にあて、去年以上に練習しようと思い、予定以上に怪我なく順調に練習することが出来た。もちろん、走った分だけ単純に走る力がつくわけではないが、去年より明らかに走れるという実感もあり、「まずは完走、そして去年以上の記録」というのはとりあえずの目標。あまり大きなことは言いたくないので、それ以上の目標を心に秘めて、そこを狙ったペース設定をして走ることにした。

 今回の設定ペースは、81kmのコリントスまで7時間程度、100km通過が9時間。その後、10km1時間(1km6分)というように考えた。これなら無理はないだろうという実感であった。

スタート前日まで

 この時期のギリシャは、夏時間のため日本との時差は6時間。日本からの直行便はないため、今回パリ経由でアテネに到着した。去年と同じ便で、去年は日本人の大会参加者が何人もいたのに今年は誰もいない。外人の参加者らしい人もいない。本当に日にちは合っているのか?少し不安になった。選手村になっているホテルはアテネ郊外にあるため、バスで直接行ったほうが早い。もう時間も夜の12時近くということもあり、24時間走っているバスでホテルへ向かう。ただ、これがどこで降りれば良いのかよく分からないのだ。去年は連れて行ってもらったのでよかったが、今年は去年の記憶を頼りに外の景色を見ながらホテルを探す。何とかホテルにたどり着いたが、部屋がないから向こうのホテルに行ってくれ、と。1マイルくらいだから歩いていける、と。午前1時にようやく落ち着けるまで、出発してから26時間かかった。
 翌朝、7時ごろ明るくなる時間にきちんと起床。朝食後、CP(チェックポイント、給水給食のエイド)に預ける荷物等を準備する。そして、とりあえず大会本部ができる選手村のホテルに受付をしに行ってみる。隔離された感じで様子が分からないし、あとは去年のスパルタスロン仲間たちに会いに。受付、そして再会などの後、またホテルに戻り、今度はCPに預ける荷物を用意して再び選手村のホテルへ。こんな感じでばたばたしながらスタート前日が過ぎていく。選手説明会は待たされたわりには大した話もなく、ようやく再び部屋に戻って明日に備えて休む。結局、部屋は全く英語が分からないギリシャ人と同室。何とか夜9時ごろにはベッドに入ることが出来た。 

スパルタスロン (完走記)

 スパルタスロン当日。朝4時前に起床し、荷物をすべて持って選手村のホテルへ。5時から食事。どうも僕は、普通の人よりたくさん食べるウルトラランナー達の中でもよく食べるようで、食事に時間がかかる。6時にバスに乗って、アテネ中心部のパルテノン神殿の下に移動。
 さぁ、いよいよだ。無事にこのスタート地点に立つことが出来た。もうこれだけでも充実感を感じることができ、この待ち時間がたまらなく心地よい。約250人のランナーやその応援の人たちも同じ思いのように見える。空は徐々に青くなっていく。今日は天気がよさそうだ。

 

・アテネ〜コリントス(81kmCP)
 朝7時、カウントダウンの後スタート。石畳を慎重に駆け下りていく。振り返ると、朝焼けの中はるか丘の上にはパルテノン神殿が見える。始めの入りを速くなりすぎないよう気をつけていかなくてはいけない。全く無理をしない適当なペースで走り始められた気がする。始めはアテネ市街の交通を止めながら進んでいく。

 

 10kmくらい進むと、少し郊外のようになってくる。そして、軽く丘を越えるようにだらだらと上り坂が始まる。他のランナーに抜かれても、絶対にマイペースだ。特に上りは遅すぎると感じるくらいでちょうどいい。

 

 ハイウェイのような道の路肩を一気に下っていくと海沿い。15km辺りからはしばらく平坦になる。ようやく少しは落ち着いて走ることが出来る。ここまでペースはどのくらいなんだろう?今回、ストップウォッチは動かしてないし、日本時間のままの時計を見ているだけで、CPごとの距離表示もよく見ていない。あまり時計とにらめっこせず、自分の感覚を信じて走ろうという作戦だ。時計が日本時間のままなのは、少しは頭を使ってぼーっとしないように。

 

 イメージとしては、産業道路のような感じなのだろうか。とりあえずなにも考えずに道をたどる。20km過ぎにわき道に入り、今年もたくさんの子供達が元気に迎えてくれる遺跡のある町を抜ける。ここで子供達の声援を受けるのが序盤の僕の楽しみの一つ。そして景色はがらっと変わって、ガスタンクの間を抜けていき、わずかなアップダウンが始まる道へ。

 

 タンクを抜けると、いよいよスパルタスロンだなぁと感じるようなダイナミックな景色が見え始めるようになり、細かなアップダウンが本格化し、エーゲ海沿いに出るようになる。まさに「いよいよだ」と感じる。だが、ここで気合が入りすぎてはいけない。マイペース、マイペース。

 

 この後30kmを過ぎたあたりから、一旦海沿いからは少し離れる。どうも10km50分くらいで走ってきていることが分かった。設定したペースの幅の中の最も早いぎりぎりくらいではあるが、周りに日本人ランナーが多いので、つい話しながらつられてペースが抑え切れていないようだ。

 

 ここで大会の様子を少し説明。コース上の分かれ道には、たいてい写真のようなSPと書いた矢印が地面に書いてある。この矢印の方向に行けばいいのだが、夜はこの矢印をヘッドライトで必死に探すことになる。分かれ道にこの矢印がなくなったら道を間違えたと思っていい。去年大きく道を間違えたので、今年は慎重だ。そしてCPには、水分や軽食などの補給物がある。場所によってたくさんあるところやあまりないところもある。何があるのかよく分からなかったけど、水、コーラ(水割り)、オレンジジュース、クッキー、ポテトチップス、チョコレート、フルーツ、ハチミツ、トースト・・・よく覚えていない。日本でのマラソンで置いてあるものとは少し違う。

 

 さて、40kmを過ぎると再び海沿いに出る。今度はもっときれいな景色の海沿いだ。そして、いよいよ日本の超長距離界の第一人者がやってきた。とても落ち着いた走りだ。このまま行ってしまいそうな気がするようなくらい安定しているが、このまま行かれると追いつけそうにない。少し話をしたが、無理に追いかけはせず、僕は写真を撮る。空は抜けるような青空、とても美しい海沿いの景色だ。この景色はこの大会のハイライトだと思う。

   

 そして50kmを通過。4時間10分。完全に10km50分ペースだけど、そんなに速く走っている感覚はないし、まぁいいや。途中経過を打とうとするが、電波が入らない。電波を求めて走り続けるが、全然だめでついにあきらめる。

 

 真っ青な海沿いから、もうしばらくいくと中に入る。さぁ、また落ち着いて走り始めるか。ちょっと海に浮かれてペースを上げてしまったようだし。ん??デジカメの電源が入らないぞ??2週間前と同じ症状だぞ。げげっ。何度もON/OFFを繰り返すが何とも言わない。「へんじがない・・・。ただのしかばねのようだ。」がーん!!ショック。一番恐れていた事態が起きてしまった。今回は携帯も持っているので、一応携帯のデジカメ機能で食い下がっては見るが、所詮は携帯カメラ。しかも面倒くさいのでポイントに限って撮ることにしよう。仕方がない。

 

 デジカメが壊れてしまい、しかも電波も入らないので、これはもう走るしかない。落ち着いてペースを取り戻して走り始める。時々町が現れはするが、たいていは何もない草原を進んでいく。そして80km手前。ハイウェイにぶつかり、そこを上り始めるともうすぐコリントスだ。始めの大きなCPがある。ここではサポートが受けられるとのことで、日本スパルタスロン協会代表で24時間テレビのマラソンでも知られる坂本さんたちが待ってくれているはずだ。ものすごく深い有名な運河を渡り、最後の1km近い上りを終えるといよいよCPだが、少し脚が重いことに気がついた。この時点では、どうも日本人の先頭になっているようだったが、ここで追いつかれて一緒にCPへ。ここへの到着は3番目とのこと。スパルタスロンで3番かぁ、すごいな。

 

 81kmコリントスまでは6時間40分くらい、10km50分ペースできてしまった。それだけ走れば多少脚は重くなるか。少し休憩、補給してマッサージもしてもらう。去年もここでマッサージをしてもらい、つぶれかけてた脚が復活した記憶があるので、今年もそれを期待。10分ほどの滞在の後、出発。

・コリントス〜サンガス山 (81km〜172km)
 コリントスを過ぎると、景色が一変する。急に田舎に入り、ぶどう畑の中や草原を抜けていくようになる。アップダウンもそれなりに続く。意外ときつく、もうペースを維持するので精一杯。大丈夫かなぁ。

 

 ぶどう畑の中のCPではぶどうが出てきた。緑色で粒が長細くて大きなぶどう。今年もこれを楽しみにしていた。これはしっかり食べる。ところで、今回の秘密兵器として、100円ショップで買った干し梅と塩をパックしたものを用意して持って走っていた。特に長い距離を走るときほど塩が重要だと2週間前に教わったこともあって。今回、これが予想以上に役に立っていた。あまり汗はかいてないけど、塩分が足りない。暑くて乾燥しているので、汗がたくさん出てもすぐに乾いてしまっているのだろう。とにかく塩と水を摂ることだけは注意して走ってきた。ところが、振り返ってみると他の補給物はあまり摂っていなかった気がする・・・。
 100km通過の8時間40分は予定よりやや早め。100kmを過ぎ、急につらくなってきた。脚が重いのはもちろんだが、少し気持ちが悪くなってきた。日本人の実力者2人に何とかそれほど離されずについてきたが、ちょっと苦しくなってきた。徐々に上りが始まり、完全にペースは落ちて歩きが入るようになってきてしまった。軽い脱水症状?光化学スモッグ?エネルギー切れ?そんなような感じ。110kmを過ぎて、本格的な上りが始まる。こんなにきつい上りだったっけ?去年はこの辺は復活した後で調子よかったんだっけ。きつい上りを全く走れず、ふらふらと歩きながらCPにたどり着いた。

 あれ?坂本さんがいるぞ。ここは2つめのサポートできるCPらしい。ああ、運がいい。どうせ長時間の休憩が必要そうだったので、またマッサージをしてもらう。そして、やっぱり何か口にしろと。気持ち悪くて固形物はきつそうなので、はちみつをしゃぶって出発。少しは動けそうな気がしてきた。
 上りはきつくても、下りと平坦だけはゆっくりでも走る動きをしてみる。すると少しずつ復活してきて、何とか124kmの大きなCPに到着。ちょっと無理にでもご飯とスープとを補給して、またマッサージをしてもらう。20分くらいと思っていたけど、少しオーバーするくらい長時間の休憩を取り、出発。何とか頑張れる気がしてきたぞ。ここでヘッドライトを受け取るが、まだもう少しは必要なさそうだ。そして長袖シャツ。今日はそんなに寒くない気がするし、寒さは気合で吹き飛ばそうという気がして受け取らないことにした。スパルタに送り返す。

 ちょっとした上り下りを過ぎ、しばらくいくと日が暮れてきた。そして、路面が舗装路ではなくなってしまったこともあり、ヘッドライトの出番がやってきた。長い夜の始まりだ。暑いうちは気分が悪かったけど、涼しくなってきたら予想通り回復してきた。暑いうちはおとなしくして夜になってから頑張る、という作戦はうまくいきそうだ。じゃり道でアップダウンもあるけど、走れば走るほど復活してくる。へばっている間に13番目くらいまで落ちたようだが、少しずつまた追い抜いていく。
 各CPでは通過ランナーのゼッケンNo.と通過時刻を記録している。なので、それをのぞき見れば前のランナーとの差が分かる。どんどん前のランナー達との差が縮まる。
 未舗装路が終わり、一気の下りが始まる。調子がいいうちに行けるだけ行ってしまおう。そしてしばらく平坦。辺りは真っ暗で、遠くにはぽつんぽつんと明かりが山を登っているのが見える。あぁ、あそこであそこまで上っていくのか。もう、激しい勾配の上りは走るのはあきらめている。148kmの村のCP手前の激しい上りは歩いて上るしかなかったが、中学生くらいの子供達が迎えに来てくれたので、話をしながらCPへ。あれ?こんな田舎の村でも英語が通じるんだ。めずらしい。
 ここのCPには薄手のウインドブレーカーを預けていたので、一応首に巻いて持っていくことにする。そしてデジカメの予備のバッテリー。全く必要ない。送り返す。
 その後しばらくは、なんと言うことのない真っ暗な道だが、頭上にはハイウェイのオレンジ色のランプが連なって山と山の間に向かって消えている。あそこまで上るのか・・・。去年は、まさかと思いながらあそこまで上った。今年はそれを知ってしまっている。
 まずは序章ともいえるくねくね道の上りが始まった。すでに走って上る気はない。でも、完全に歩いてしまうとどれだけかかってしまうか分からないので、少しは走ってみる。ここまで調子がよかったので結構後ろを離したと思っていたけど、さすがにハイウェイの高さまで来る頃には後ろから追いつかれた。この上りをゆっくりでもちゃんと走ってきたんだ。すごい。そこからもう少し上るとCP。そしてそこはサンガス越えに備えるCPでもある。ちょうど何人にも追いつかれたので賑やかになっている。ここでも結構冷えてきたと感じるが、山頂はもっと寒いはずで、みんな寒さに備えて着込んでいる。僕はとりあえず温かいスープをもらって休憩後、出発。サンガス越え、そして去年間違えた分かれ道を今年は間違えないように。

 去年道を間違えたサンガスの登山道への入り口。今年は間違った道に車が待機していて、ライトでこちらを照らしている。これでは間違えようがない。去年もやってくれていたらよかったのに。ちょっと気が抜けながら岩山の登山道へ。路面はもちろんだが、勾配もいきなりきつい。これまで走るのに使ってきたのとは違う筋肉が動員されるようだ。完全に山登りでしかない。しかもふらふらしてきて山から転げ落ちそうだ。場所によっては人一人通るのがやっとのところもある。ところどころにライトが照らされてはいるものの、基本的には自分のヘッドライトだけが頼りだ。岩だと思って手を突こうとしたら草だったりすることもしょっちゅう。去年は調子がよくてひょいひょい登って行った気がするけど、今年はきつくてきつくて、手をついて立ち止まるたびに何度も倒れ込んでしまいたいと思った。でも、こんなところで動けなくなってしまっても仕方がないので、何とか頂上を目指す。そして40分後、ようやく頂上に着いたようだ。このCPで毛布をかぶってスープを飲んでしばらく充電。ここにずっとじっとしていると寒いので、下山する。ところが、下りは下りでまた大変。富士山の下山道みたいで、所々に大きな石があるじゃり道で勾配もきつい。転がり落ちないようにブレーキをかけるのが大変なので、ほとんど歩いているかのようなスピードで下りることにした。普通の道に出てから走ればいいや。じゃり道でスピードも出るのに路面が見えなくて怖い。ときどき大きな石を蹴っ飛ばしてしまい痛い。そしてまた40分後、ようやくサンガスのふもとの村のCPに到着。やっと普通の道を走れる。
 少し落ち着きを取り戻しながらしばらくいくと172kmの大きなCPに到着した。

・サンガス山〜200km手前付近
 この主要CPを越えしばらくすると、ハイウェイ沿いの平坦な何もない道を進むことになる。ここからしばらくは走りやすいコースだ。それにしても星がきれいだ。今日は半月で、夜のはじめのうちは目の前につきが見えていたが、日付が変わる頃からは月のない星空となっている。まさに降ってきそうな星空とはこのことだろうと思うが、こんなにきれいな星空はしばらく見たことがなかったので、空を見上げると星が降ってきそうで怖いくらいだ。辺りが暗いからだけでなく、空気が乾燥しているからこれ程きれいに見えるのだろう。あとで聞いた話では、何度も流れ星が見えたらしい。僕はそこまで見ている余裕はなかった。夜の間、この素晴らしい星空が何度もきついときに気を紛らわせてくれた。

 去年はこの辺りは何人もの日本人ランナーと前後しながら走ったことを思い出す。今年は一人で気楽に走り、調子もいいので、一人また一人と追いついていく。180km過ぎからは分かれ道が増えてくる。目印を見落とさないように気をつけて進む。190km付近で静まり返った村を抜けるが、ますます道が難しい。2度道を間違えた。それでも、去年の記憶がわずかに残っているし、今年は迷子に対して慎重になっているので、少しでもおかしいと思ったら矢印があるところまで引き返して復帰。結局、10分ロスが2回くらいで済んだ。
 村を抜けると大きな道にぶつかり、その後はスパルタまでこの道を行く。ここまではほぼ平坦な道をきたので走りやすかったが、この200km付近からは激し目のアップダウンが続く。去年はこの辺りで夜が明けてきたので、ここにきての目の前のアップダウンに絶望しながら進んだ記憶がある。ところが、今年はまだ5時で真っ暗。気温も徐々に下がってきたようで、吐く息がどんどん白くなってきた。でも、ここで首にある長袖ウインドブレーカーを着てしまうと気持ちが切れてしまうと思い込み、半袖短パン、帽子にヘッドライトスタイルで走り続ける。調子はいい。

・200km付近からのアップダウン〜スパルタ
 いきなり、こんなに長かったっけと思うような上り坂。先が暗くて見えないから余計そう感じるのかもしれない。それでもそれなりのペースで走って上り続けられている。10km1時間よりちょっとかかっているくらいだろうか。上ったら今度は下る。辺りは真っ暗で、車やトラックが高速で横を走りぬけていく。そして、目の前にぽつんぽつんと光る明かりを見て「あそこまで上るのか、げげっ」とか思いながら行く。
 朝7時。210kmを過ぎる辺りで夜が明けて辺りが明るくなり始めてきた。あれだけ星がきれいだったので、今日もきっといい天気だろうと思ってはいたが、草原を照らす朝焼けがめちゃくちゃきれいだ。なんでデジカメが壊れてるんだ。携帯カメラではこれはきついだろう。

 

 僕はまだそれなりに走れてはいるが、そうはいかないランナーに少しずつ追いつく。サンガスを下りたところでは15番くらいだった順位が、いつの間にか8番くらいまで上がっている。前との差もどんどん詰まっているようだ。これは気力を呼び起こさせてくれるいい材料になる。
 去年、夜の荷物を預けた直後に大雨に降られた付近も、去年のことを思い出しながら何事もなく通過。いよいよあと20kmほどとなってきたが、ここに来て少し脚がきつくなってきた。もう少し持ってくれていれば。これまでの行程を考えると、あと20kmなんて大した距離じゃないと感じはするものの、きつくなるとやはり長く感じるものだ。上りは走ることをあきらめ、歩いて上る。でも、もう少ししたらあとはスパルタまで一気に下っていくだけだ。何とかなるだろう。

 あと10数kmというところ辺りから、遠く山あいにスパルタの町が見えてくると話には聞いている。そこでまず少し感動すると聞いたが、去年は霧の中で全然見えなかった。今年は期待できるが、あれなのか?あと10kmちょっとのはずだけど、あんなに遠くにあるのか。しかもあんなに下っていくのか。
 一つ前の順位のランナーとの差はどんどん縮まっているようだが、この縮まり方だと追いつけるかちょうど微妙なくらいだ。でも、早くスパルタについて休みたいので、重力に任せて一気に下っていく。もう脚への衝撃のダメージは気にしないでいいだろう。
 あと10kmを切った。まだ先導のパトカーは来ないか?あと5kmくらい。「あっ」ランナーがいた。追いついた。明らかにペースはこっちの方が速い。パトカーもいる。自転車で付いている人もいる。ん?その前にもう一人いるぞ。全然気がついていなかった。そして6番目に上がる。が、日本人のランナーだ。あれ?全然知らなかった。うーん。こんな最後の最後で抜いてしまってなんか微妙な気分だ。
 いよいよスパルタの町へ。ようやく坂を下りきったが、この下りで脚に受けたダメージは予想以上だったようで、平坦になって脚が前に出ない。もう「どうしてもこの順位で」という気はしないので、きついから先に行ってもらう。始めに抜いた外人のランナーは来ない。この順番であとはもう楽してゴールしよう。
 スパルタの子供達が自転車でたくさんついてきて迎えてくれる。前との差はどんどん開いていく。少しは走らなくちゃいけないか。いっぱいいっぱいだけど、走ったり歩いたりで、最後のCPを過ぎてあと2km。いよいよ今年もレオニダス像が待っている。

 スパルタの市街。今年も町中でたくさんの人たちが声をかけ迎えてくれる。たくさんの声援に応えながら、いよいよレオニダス像だ。今年は天気がいいせいか、きょねんよりたくさんの人に出迎えられている気がする。そろそろ前のランナーのゴールのセレモニーは終わったかな?ちょっと気にしながらゴールのレオニダス像へ。リタイアしたと思われる他の日本人ランナー達の顔もある。今年もいろいろあったけどやっとたどり着いたぞ。階段を数段上って、大きな像の脚めがけてもたれかかる。「やった」

 

   

 しばらく像の脚にふれながら、今年はちゃんとカメラマンに向かって笑顔。あとでいい写真をくれるといいな。そして、少し重い金属製の杯で水を飲まされ、続いて月桂樹の冠。大勢の観客に応えるが、どこを向いていいやらよく分からない。これでゴール後のセレモニーは終わり、救護テントへ強制的に運ばれる。
 ゴールタイムは27時間38分で7位。日本人では4番目になる。去年よりちょうど2時間早く到着したことになり、十分満足できる結果だ。

 救護テントで寝かされたまま放って置かれて動けない。特に痛いところはないし、早くホテルの部屋に行ってシャワーを浴びたかったので、もういいから行かせてくれ、と。オレンジジュースだけ飲んで、タクシーでスパルタインへ。
 同室はオーストリア人夫婦。日本人と同室の方がよかったけど、いい人たちだったのでまぁよかった。汗を流した後、再びレオニダス像のところへ。ゴール地点の雰囲気を味わいにいく。しばらく後、昼食のためホテルに戻る。昼食を食べたら眠気に襲われ、倒れるように昼寝。夜は町の広場でお祭り&歓迎会がある。

ゴール後

 夜には、町の広場でお祭り&歓迎会が行われた。ステージの前にはスパルタ市民が大勢集まり、我々完走者はステージ上に席が用意されている。

 

 完走者全員の名前が読み上げられる。気分がいい。そして3位までは表彰があり、優勝者の国の国家が流れる。女子の優勝は日本人だが、テープの用意がないようで、通訳の人とで歌っていた。そして花火が威勢良く上がる。真上で上げるものだから、灰がたくさん降ってきて困った。もうやめてくれ、とおもってもまだ上がる。もうちょっと考えてあげてくれればいいのに。真上を見ると首も疲れるし。
 一通りのセレモニーの後は、ステージ上でライブなどが始まるようだった。我々は退場するが、スパルタ市民のお祭りは続く。我々をネタにしてお祭りをやっているようだ。

 なんとなく、またレオニダス像まで散歩した。夜のレオニダス像。その脇では韓国チームが宴会をしていた。僕のことを覚えていてくれたらしく、呼ばれて混ぜてもらった。もう少しハングルの勉強を続けていればよかった。

 翌日。アテネまでバスで送ってくれるが、途中で美術館、オリーブ博物館に強制的に寄り道してレストランへ。ギリシャ人の時間感覚はとってものんびりしている。アテネに着くころには日が暮れかかっていた。何もしていないのに疲れた気がした。
 そして夜は、去年のスパルタスロン仲間と去年行ったところと同じレストランに行った。ビーチ沿いの外の席。穏やかな海が月明かりに照らされていい雰囲気。ギリシャ料理を堪能しました。

 その次の日は、夜に表彰式があった。案内には、一応スーツでと書いてあったのだが、スーツで出る人はほとんどいない。彼らにとってはジャージが正装なのかもしれないが、僕は「こういうところではやっぱりスーツだろう」と思うので、普段着ないスーツで今年も出席する。去年はおしゃれなホテルだったが、今年はアテネ中心部のザッピオンという展示会や来賓との会食をするような、ガイドブックにも載っている建物。去年のところもよかったが、こういう雰囲気のところもいいものだ。が、せっかくいい雰囲気なのに、ギリシャ人の時間感覚にはあきれる。いつになったら始まるんだ。結局始まるまで1時間以上待っていた。

 

 よく分からないギリシャ語での挨拶の後、やっぱり3位までは別に表彰。その後、完走者全員の表彰になる。壇上でメダルと完走証をもらった。この瞬間もゴールの瞬間と並んでいい気分である。

 

 その後、会食。(料理はおいしいのだが何の説明もなく、料理を取りに行くのに時間がかかりすぎた。このギリシャ人のいい加減さはなんとかならないか。) ホテルに帰ってくる頃には日付がかわりかけていた。

 翌日、いよいよ帰国。今年もスパルタスロンが終わってしまった。
 走り終わった直後は、正直言うともう少し高いところを狙っていたので微妙な感じが残っていたが、徐々に満足感が大きくなってきた。今回の結果は満足できるものと思えるようになったが、やっぱりやり残したことが出来たような気がするので、来年になるかは分からないけどいつかまたスパルタスロンに挑戦したいと思う。


<主要CPの通過タイムとその走行速度>

CP 距離 (km) 通過時刻 通過タイム コメント
0 0 7:00
13 50.0 11:09 4時間09分 1km5分ペースで
22 81.0 13:43 6時間43分 コリントスCP
28 100.5 15:37 8時間37分
35 124.0 18:31 11時間31分 ペースダウン
43 148.5 21:34 14時間34分
52 172.0 1:38 18時間38分 サンガスを越えて
61 198.4 5:18 22時間18分 アップダウン始まる
70 230.1 8:56 25時間56分 スパルタへ下る
75 245.4 (Goal) 10:38 27時間38分 7位(日本人4位)


区間 ラップタイム
スタート〜50km 4時間10分 50分/10km
50km〜100km 4時間25分 53分/10km
100km〜150km 6時間15分 1時間15分/10km
150km〜200km 7時間40分 1時間32分/10km
200km〜250km 5時間10分 1時間2分/10km