京都府京丹後市(2004年4月から市になった)
記録:10時間45分くらい (100km)
この大会は京都府の日本海側(京都府が日本海に面していることを知らない人も多いが)の丹後半島で行われる。自分が初めてウルトラマラソンに挑戦した大会であり、思い入れの強い大会である。今回で3回目の参加になる。この大会は、まず景色が素晴らしく、そしてボランティアの役員や地元の人たちの応援がうれしい。会場の近くには日本三景の一つ、天の橋立もあるように景色がいい地域で、海と山が迫っているため、海岸から山、山から海岸、そして町へと景色がめまぐるしく変わるのが特徴である。
大会を前にしてコンディションはいいとは言えない。3週間前のフルマラソンのダメージは抜けてきたかもしれないが、1週間前に風邪を引いて熱が出た。食欲もなくなり、トレーニング、調整も中断したので、体調がぎりぎり間に合ったという感じである。3日前に軽く走ったら筋肉痛になってしまうほどであった。今回は特に、無理せず景色や土地の雰囲気を楽しもうと改めて思って臨んだ。
前日に電車に乗って会場にやってきたが、雨が降ったりやんだりの不安定な空模様。当日も雨が降るという予報であった。前年も初めのうちは雨の中を走ったので、多少慣れはしたがやはり雨はいやだ。前日の夜には前夜祭が行われた。毎年大量の食べ物が出るので、食べ過ぎないようにと気をつけていたが、今年は量が少なくほとんど食べることができなかった。宿に行けばしっかりご飯が出るので問題はないが。そして今年は60kmの部にそのまんま東が参加するとのことでステージでしゃべっていた。一人でずっとしゃべっていて面白い人だった。宿に入り寝たのは夜9時半。翌日は1時半ごろから朝ごはん、3時出発、4時半スタートである。
朝2時ごろ起床。雨は降っていない。こんな時間から朝ごはんがしっかり出るので、エネルギーをとらなくてはとがんばって完食。外は真っ暗、雨の予報が出ていたこともあり、帽子、サングラス等の暑さ対策はいらないと考え、デジカメを入れるための小さなウエストポーチのみ持ってスタートへ。
そしてスタート。前半から飛ばし過ぎないようにと抑えて、抑えて走り出す。網野の町中を走りしばらくすると早くも峠越えが。電灯もない峠道なので周りがまったく見えない。ただ星がきれいに見える。たくさんの星空の中を走るというのも気持ちいいものである。
7km地点の最初のエイドステーション(給水所)が峠の頂上で、一つ目の山を越えた。自分はエイドに寄るのを楽しみに来ているのだが、他の人はすぐに通り過ぎる。自分はしばらくエイドにいる人たちと話をしてから出発。あたりはようやく明るくなり始めてきた。10kmを越えるころからようやく全体のペースも落ち着いてきて、同じくらいのペースで走る人たちと一緒に走るようになってきた。年齢が倍以上もあるけど、今でも自分より速く走る人とこの先20kmほど話をしながら一緒に走る。走りながら話すのが好きな人とそうでない人がいるので、そうでない人には注意が必要である。そういうオーラを感じたらそれ以上は話しかけないようにする。ウルトラの場合は話しながら走るのが好きな人が多い気がするが。
20kmから30kmくらいまで、久美浜湾を回る。海との入り口が狭くなっているので橋でつながれていて、ぐるっと回って網野の町へ帰っていく。美しい湾である。
30km地点にあるエイドステーションで休憩。ここまでは順調にきていた。
30kmを越え、一緒に走っていた人にはおいていかれるようになった。もともと自分より速く走る人だから当然なのだが、それより自分の体調がおかしいことに気づき始める。朝から、食べたものを消化し切れてない感じだったが、内蔵の機能が失われているような気がする。エネルギーをとろうと、エイドでものを食べても力がわいてこない。おまけに足の付け根の外側、普段痛くなることがない筋肉が痛くなってきた。これは多分走り方のせいであろうが、つらく感じられてきた。これまでは40kmでも「もう40km?」という感覚だったのに、「まだ30km」である。フルマラソンならば残りは気合で乗り切れるところだが、これはウルトラマラソン、まだ序盤である。仕方がないのでペースを落とす。40km地点にかけて、行きと同じ峠を帰っていく。もう登りはほとんど歩いている。
行きと同じ峠の頂上にエイドがある。何とか頂上に着いたが、下っていくのも大変である。スタートの近く、網野の町に着いたらリタイアしよう、そんなことを思っていた。次のエイドではうどんが用意されているので、これだけはしっかり食べようと思い、5km先のエイドへ向けて出発した。この先は下りだが、足や内臓への負担が大きいので走ったり歩いたりになっている。しかしここの景色も素晴らしい。リアス式海岸がきれいに見える。
再び峠を降りきって、44km地点のエイドに到着。絶対うどんを食べきるという目標を達成。すでに水は飲みすぎ状態、水、スポーツドリンク、レモンティーなどとりやすいものからエネルギーをとろうとするが、体があまり受け付けてくれない。予想と反して非常にいい天気になっているので暑いのだが、水は飲みすぎてもおなかでたぽたぽになるだけである。どのエイドでもバケツに水が用意してあるので、さっきから水を頭からかけまくっている。ここではマッサージもしてくれるし、居心地がいいので長居してしまう。というか立ち上がれない、走り出せない。あと5kmくらいで網野の町に帰れる。もうリタイアする気満々である。ただまだ朝9時前、ここでやめたらあとひまだなぁ、という思いは残る。
そしてスタート地点のすぐ横を通る。あぁ、ここでやめたらどんなに楽なことだろう。と思ったが、惰性で前へ進んでしまう。少し行くと49km地点でエイド。なぜか突然ここでスイッチが入ってしまう。あれ、なんか行けるんじゃないか?突然気合が乗ってきて、走り出す。この気合が乗っている間に距離を稼ごうとスピードを上げる。10kmのラップが前の2区間では1時間15分以上かかっていたのが、突然55分近くまで来るようになった。ランナーズハイではない、これまで味わったことのない感覚である。50km過ぎでは、「丹後あじわいの郷」というテーマパークのようなところのなかを一周する。坂の上にあるので上り下りがめんどくさいが、応援が多いのでちょっとうれしい。参加者のゼッケンと名前などが書いてある冊子を持っている人が多く、名前を呼んでくれる人もいてとてもうれしい。自分はそういう応援に応えたい人なので、手を振ったり声を出したりする。そうしたほうが気分もよくなってくる。それが楽しいのだが。
あじわいの郷内にあるトイレ。毎年寄っている。今年は水が出なかった。
55km過ぎのエイド。まだ気合が乗っているので、長居しないように気をつけながら先を目指す。梨をいくつもほおばる。
そして60km。ここまでは気合が持った。ここからは最大の峠越えが待っている。10kmで400mを登る。車でも相当な上り坂だそうだ。ここでのエイドで長居しているときに何人かのランナーと話しをした。そしてがんばって登ろうと励ましあう。自分は3回目の出場で、このコースのベテランになっているので、コースのアドバイスをしたりした。なんか変な感じである。自分よりずっと年上の人ばかりなのに。
自分の走るリズムは変わっている。みんなはゆっくりゆっくり、一度歩くと走り出すのがつらいので歩かないように走っているのだが、自分は一気に走っては歩く、走っては歩く、人を抜かしては抜かれる、そんな走り方をしている。おそらくテニスをやっているせいなのだろうが、走る、休むのメリハリが利きすぎである。そしてエイドでは長居をする。エイドにあとから入ってきた人に先に立たれ、途中で追い抜く、そしてまたエイドで先に行かれてしまう。途中から何人にも「またかよ」と笑われるようになり、「またあとで」「追いついて来いよ」「どうせすぐ追いつくだろ」と先に行かれるようになる。そう言われたらがんばって追いかけるしかない。もう疲労困憊、足も重くなっているのに。ただ、こういう人たちがいなかったらきっと登りきれない。一度この流れをきってしまうともう先に進めなくなると思い、がんばる。
上のほうまで登ってくると景色はいい。こんなに登ってきたんだなと思いながら。
頂上付近、碇高原牧場という大きな牧場にエイドがある。
必死に登ってきて天国のようなところで、マッサージもしてくれ、食べ物も豊富にあるが、食べ物は体が受け付けない。この先はまた400mを一気に下ることになるが、くだりは足への負担が大きいので走り方が難しい。ここまでは、登りきるまでは、と気合を入れていたが、また気持ちを切り替えなくてはいけない。また先に行かれたからしばらくしてから追いかける。余計なことは走りながら考えよう、特に何も考えずくだりに突っ込む。相変わらず走るときは、特に下りは速い。これでいいのか?と思いながら何人も抜いていく。足へのダメージはかなりのものである。これまでの2回はこの下り坂で足がやられている。坂を一気に下りていくと海が見えてきて、非常にいい景色である。ここら辺の海は非常にきれいである。天気がよくて暑いが、逆におかげで景色は非常にいい。
80kmを越え、また峠がやってくる。これまでで一番勾配的にはきつい。一気に登って一気に下る。旧道なので車もいなけりゃ人もいない。最後の力を振り絞って歩く。
85kmくらいでようやく大きな峠はすべて越え、ある程度平らな道にである。だが、ある程度である。普通に考えたらここからもアップダウンは続く。これまでを考えたらということである。ほんとにタフなコースである。
90km付近のエイドで、ついに60kmくらいから一緒に走ってきた人たちにおいていかれた。自分の足はもう限界近いし、気力が続かなくなってきた。ここで去年も途中で一緒に走っていた人と再会。今度はその人と一緒に走ることにした。が、ちょっとしたらまたおいていかれた。もうあとは気合しかない。ここからならあとは歩いても、制限時間内にゴールできる、余裕があるときに走ろう。そう思うと気持ちが楽になる。実際には半分以上は走った気はするが。そしてあと4kmの看板、3kmの看板とカウントダウンが始まる。あと少し、あと少し、だがやはり足は進まない。
そしてついに100kmの看板。あれ?だがゴールではない。今回からスタート、ゴール地点が若干変更になって距離が100.8kmになったそうだ。ちょっと間抜けな話だが、ここまで着たらもうどっちでもいい。あとちょっと気合で進む。
そして、ようやくゴール。タイムは10時間45分くらい。去年より2時間近くも多く楽しんでしまった。一時は前半でリタイアしようと思っていたのに、よくゴールまでたどり着いたと思う。これまでとは違う意味で非常にうれしい。また、タイムが遅いときは遅いなりに楽しいことがわかった。周りにランナーがたくさんいるので、これまでで一番いろんな人と話しながら走ってきた。ほんとにゴールにたどり着けてよかった。しかもこんな時間で帰ってこれるとは思ってもいなかった。
今回の敗因(?)は体調管理と体調に合わせた走りができなかったことだろう。一週間前に熱を出し、食欲が回復したのが数日前だったことに加え、そんなことおかまいなしに前半から絶好調時のペースで飛ばしてしまった。100kmは長丁場になるので、前半で体調を確認しながらそれなりの走りをする必要があった。まだまだ甘い。そして普通の人間になってしまったような気がした。来年はこの大会に参加するかわからないが、これからの走り方を考え直さなくてはいけないと思った。ただ、このコース上の景色、エイドや応援の人たち、他のランナーとの交流は今回も非常に楽しく、一日中かけて走りきるウルトラマラソンは、その日が夢の中にいるようであったことは間違いない。
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