2009 SPARTATHLON 
   
(スパルタスロン ΣΠΑΡΤΑΘΑΟΝ)

 2009/9/25〜26 ギリシャ・アテネ→スパルタ (245.3km 制限時間36時間)
  結果:25時間43分21秒 (自己ベスト)   4位

 大会公式HP : http://www.spartathlon.gr/ (ギリシャ語、英語)
 日本語HP : http://www.r-wellness.com/spartathlon/index.html

スパルタスロンとは・・・

 ギリシャのアテネからスパルタまでの245.3kmを制限時間36時間以内に走る大会で、多くのランナーの憧れの大会でもあります。約2500年前に、アテネ軍の将軍がスパルタ軍に応援を依頼するため、伝令であるフェイディピデスが出発の翌日にアテネからスパルタに着いた、と歴史家ヘロドトスが記していることに由来します。アテネ〜スパルタ間246kmを36時間で走破したということになります。

今年のスパルタスロンへ向けて・・・

 今年も、完全に順調に準備ができたとは言えませんでした。走り込みが軌道に乗り始めた8月始め。突然右足かかとの激痛に襲われ、歩くのも困難になってしまいました。去年は左足かかとの疲労骨折があったので、今年も同じ疲労骨折が頭をよぎりました。この時期に疲労骨折してしまうと大会までには間に合わない・・・。
 幸い、筋肉の炎症だということでしたが、3週間ほどの休養を余儀なくされました。でも焦っても仕方がない。せっかくだからしっかり疲労を抜いておこう、そう気持ちを切り替えて、筋肉を落とさないだけの最低限のリハビリでつなぎ、何とか無事ギリシャに出発することができました。

 また、今年は婚約中の彼女も初参加するということで、大会前後のギリシャ旅行も楽しみでした。もちろん二人とも完走したいという思いもあり、これまでとは違った気持ちで大会に臨むことになりました。
 

2009 スパルタスロン

・前日まで

 今年は、日本スパルタスロン協会をしているランナーズ・ウェルネスの方々に同行させていただき、選手村ではなくアテネ中心地のホテルに滞在することになりました。他の選手達に会えないのは少し寂しい気もしたけど、観光にはとても便利で楽しめました。

 大会前日は、チェックポイント(CP)のエイドに預ける荷物をまとめ、受付とその荷物預けに選手村のホテルに行ったくらいでのんびり過ごしました。夜はホテルの部屋で2人でいろいろ買ってきた物を食べ、夜9時ごろに早めに休みました。

 <今回預けた荷物>
CP22(81km・コリントス): WGH Pro、エナジーバー(どこかの大会でもらった物)
CP35(124km・ネメア): ライト(手持ち、テールライト)、長袖シャツ、アームウォーマー、
                蛍光タスキ、WGH Pro、アミノバイタルのゼリー(サロマの賞品)
CP43(143km・リルケア): 長袖シャツ、WGH Pro、アミノバイタルのゼリー
CP47(159km・山の麓): 手袋、デジカメの電池、WGH Pro、アミノバイタルのゼリー
※食べ物は全てエイドの物でまかないました。


・大会当日

 当日は朝5時過ぎに起きた。スタート地点までは歩いて10分ほどなので、もう少し寝ていようと思ったけど、いい目覚めだったので起きてゆったり準備をした。ギリシャに着いてからは現地のお日様に合わせて生活していたので、時差ボケもなくよく眠れた。まだ走るんだという実感がわかない。
 朝6時半、辺りがまだ暗い中、いよいよホテルを出発。パルテノン神殿の下のスタート地点に行くと、既にたくさんのランナーがスタートを待っていた。久しぶりの再会に話を弾ませたり記念写真を撮ったりしていると、あっという間にスタートの時間が近づいてきた。空も徐々に明るくなり始めた。さぁ、今年もやってきたぞ。ようやく気持ちが盛り上がってきた。

 そして朝7時。曇り。
 いよいよ2009年のスパルタスロンのスタートだ。スタートの混雑に巻き込まれないように今年も前の方からスタートし、石畳を下って行った。

 

・スタート〜序盤

 スタート前は2人一緒にいたけど、お互いに頑張ろうと声を掛け合った後、それぞれのペースで坂を下って行った。今年はペースを設定するのはやめた。自分の体感を信じて、無理がなく楽で快適なペースで走ろうとしていた。
 坂を下り、アテネ市街地の道路に出る頃には、ある程度ペースが落ち着いてきた。周りとの位置関係も落ち着いてきたけど、少し速い様な気もした。やはり待ち遠しくて我慢しきれないのかもしれない。でも、無理にペースを落とすことはない。あまり気にせず、気持ちいいペースで行こう。異変を感じ始めたら早めに対処すればいいだけのことだ。

 

 10km付近までの坂を上り始める頃から、ようやく気分も落ち着いてきたので淡々と走り始めた。そして坂を下ると海沿いの道に出る。ここからしばらく平坦。まだまだウォーミングアップ。

 

 20km過ぎで遺跡のある町に入って行く。今年は賑やかな子供達はいるかな?昔はいたけど去年はいなかった。あ、いた!今年もハイタッチ。少し気持ちが盛り上がってきて、いよいよ始まったという気がしてきた。人の温かい応援を受けると、気持ちよく走れるようになってくる。

 

 石油コンビナートの合間を抜けて丘を越えると、いよいよエーゲ海沿いの道に出る。朝には少し雲が多かったものの、徐々に天気も良くなってきたので、今年もきれいな海を見ながら走ることができた。海沿いに出る手前くらいで、SAKAIさん(24時間走日本代表で、同じソフトテニスプレイヤー)がすぐ後ろにいることに気付いた。このエーゲ海沿いの30kmくらいから、自然に並んで走るようになった。でもマイペース、マイペース。

 

 時間の感覚はないけど、もうすぐ10時。そろそろ暑さを感じるようになってきた。今年は涼しいかもしれないという話もあったけど、元々スパルタスロンは暑いものだと思っているので、暑くなるのは当たり前で特に気持ちの変化はない。もう一度気持ちを引き締め直すだけ。並んで走っていても、時々一言二言話すだけ。今はまだ落ち着いて。

 食べ物は全てエイドにある物で何とかします。去年の序盤はドライフルーツのいちじくにはまったので、今年も楽しみにしていた。しかし、あると思っていたところにない・・・。仕方ないので、ビスケットとクッキーを一つまみして走りながら食べる。水分は、摂り過ぎてお腹に溜まる事のないように気を付け、コップ一杯を毎回摂るようにしていた。途中からは、蜂蜜のかかったラスクのようなもの、セサミバー、チョコレートなどがおいしくて食べていった。

 

・序盤〜コリントス(81km)

 40kmを過ぎても、今年はまだそれほど疲労感はない。この先にはお気に入りの景色がある。相変わらず2人で、少しずつ上っているその場所で走りながらパチリ。と、その時、「撮ってやろうか?」。ありがたいお言葉。走っているランナーにこちらからお願いするわけにはいかないので、その言葉を待ってましたよ。天気がいいので逆光にならないように、はいチーズ。いい人だぁ。

 

 海沿いの道は、景色はいいけど細かなアップダウンがいやらしい。でもまだ余裕を持って走れているので、あまり気にならない。そろそろ、いつも時計をチェックしている50km地点のエイドだ。今年もここで時計をチェック。むむ、去年までと変わらないぞ。少しゆっくり目だと思っていたのに。
 いつも50kmちょうどになっているエイドに到着。距離表示を見ると、??。まだ48.8kmだ。スタート直後のコースが少し変わって短くなっていたのかな?でもこれで納得。去年までよりやや遅めの通過だけど、予定よりは速め。自然な流れできているし、まだあまり疲れていないので、いい感じだ。天気もいいし、最高!
<CP 13 48.8km  11:03到着 4時間03分>

 

 海がとってもきれい。毎年思うけど、なぜこんな色をしているんだろうか?水は透き通っているし、青い海に青い空。吸い込まれそうになり、ついついペースアップしたくなってしまうところ。でも我慢、我慢。徐々に暑くなってきたし、これからこれから。

 

 60kmくらいからは少し中に入るけど、海沿いなので時々まだ海が見える。少しずつ前に上がってきて、追いつき追い越すランナーは少なくなってきたけど、去年までより少し多い気がする。始めに飛ばしていったんだろうか?
 各エイドのCPでは、通過したランナーのゼッケンNo.と到着時刻、出発時刻を記録している。それを見れば、自分の現在の順位や前との差などが分かるのだが、まだ一度も確認していない。まだ気にするところではないし、なにより自分のペースで走ることが第一。ただ、少しは気になってきた。

 各エイドでいろいろつまみ食いしながら走ってきたからか、お腹が膨らんで張ってきて走りにくくなってきた。食べすぎか?仕方ないから少しペースを落とそう。「お腹パンパンなので少しペース落とします」。ずっと並んで走ってきたけど、ここで前に行ってもらった。少し太ももにも張りを感じ始めてきたし、暑くなってきたことも気になる。ここは、2年前に優勝したScottを抜かした場所。彼は暑くなってきたからペースを落としたとのことだった。そこで調子よく走った僕はつぶれた・・・。同じ失敗を繰り返さないようにしないと。
 少しずつ背中が離れていくが、後ろ姿を見ると追いかけたくなってしまう。いや、ここは我慢だ。しばらくつまみ食いを控えて様子を見ながら走った。70km付近になって、ようやくお腹の張りは落ち着いてきた。

 

 若そうな外人ランナーを抜かすときにひと声かけたら、併走して話しかけてきた。自己紹介すると、僕のことを知っていると言う。これまでの記録も。27歳のポーランド人としばらく話をしていて楽しかったけど、あまり長話は今日はしたくない。エイドで止まる時間を利用して彼をおいていった。

 

 自分は今、どのくらいの位置で走っているんだろう?何人が前にいるんだろう?また前にランナーが見えてきたぞ。
 ん?あの後ろ姿はもしかして・・・。毎年好成績を残している24時間走日本代表のマックさんじゃないか?始めに飛ばしていったのは作戦だと思うけど、それにしてはペースダウンしてくるのが早すぎる・・・。見間違いならば、と思ってたけど、姿が大きくなるとはっきり確認できるようになった。ちょっと疲れたみたい。

 

 もうすぐ81kmの大きなCPだけど、その前に長い上り坂がある。ここでチームメイト3人が一緒になり、少し話をしたり、また写真を撮ってもらったりして楽しかったけど、何だか不思議な気分だった。マックさんをおいてSAKAIさんと並んで坂を上っていく。

 

 ひとまず坂を上り切ると、有名なコリント運河を渡る。毎年、観光客にも応援してもらえて嬉しい所。今年も橋で一度立ち止まってパチリ。何度見ても、人が掘ったというそのものすごい深さにビックリする。

 

 最後にもう少し上ると、ようやくCPに到着。結局今年も去年までと変わらず、ここまで6時間40分くらいの1km5分ペースで来てしまった。でも、これまでで一番余裕はありそう。
 ここはサポートが選手に接触できるエイドだし、日本人のサポート隊もいるので小休止。何か食べようとしたけど、どうも食欲がわかない。暑さにやられてきたか、お腹がやられてきたか。少し屈伸などをしてみると、思った以上に脚が疲労しているように感じた。少し気付くのが遅かったかもしれない。2人が出発するのを見送りながら、僕はマットに横になってストレッチをした。このまましばらく休んでしまいたかったけど、あまり休んでしまうと動き出すのが辛くなる。ポツポツとランナーが到着し始めているし、さぁ、出発だ!
 その前に、初めてチェックシートを確認。何と、僕の到着は2番目になっていた。しかもトップとは9分差。出発時点でも5番目。こんな前にいるのなら、ますます飛ばす必要はない。まだ走れてはいるので、自分のペースで、もう一度リズムを作り直して落ち着いて行こう。
<CP 22 81km  13:40到着 6時間40分 13:45出発>

 

・コリントス〜ネメア(124km)

 コリントスのCPを過ぎると景色ががらっと変わり、車のめったに通らない田舎道になる。オリーブ畑の中を、そしてそのうちぶどう畑の中をも走っていく。しばらく走っていると、前の方に2人の姿が見えてきた。あれはあの2人に違いない。自分のペースを乱して追いかけることはしないようには気をつけながら、2つ先のエイドで2人に追いついた。

 

 しかし、どうも疲労が大きい気がする。出るものも緑がかっているように見えるくらいに濃く、脱水気味になっているのだと感じた。しばらく食べ物も食べられない状態が続いているし、このままではこの先持たないと感じた。幸い、そこのエイドにスイカがあったので、いくつもかぶりついた。水では吸収しきれないと思い、水分の多い果物で補給した方が良いと思ったので、ちょうど良かった。

 

 ここでまた2人を見送った。そして、僕は座り込んでしまった。今度こそ本当にさよならかも知れない。先へ進もうとしたけど、体が嫌がっていて動かない。気持ち悪くもなり、クラクラもしてきた。これはまずい。座り込んでいるうちに、何人かランナーがやってきて先へ行ってしまった。ただ見送るしか出来なかった。
 走り出せる気がせず、暑いし気持ち悪いし貧血みたいだし、横になってしまいたい。やめてしまいたい。いや、まだやめるわけにはいかないけど、彼女が来るまで休んでいようか・・・。いや、まだあきらめてしまっては、ここまで何をしに来たのか分からない。とりあえず歩いて先へ進んでみよう。まずはエイドを出発することから。その辺で倒れてしまうかもしれないと思いながら、何とかエイドを出発できた。

 しばらく歩いていると、少しは走れるようになってきた。でも、走っては歩いての繰り返し。厳しい日差しに照らされ、今年も暑い中の苦しい道のりになった。毎年同じ所でつぶれてしまっているなぁ。進歩ないなぁ。そんなことを思いながらトボトボ歩いて行く。後ろも気になるので、何度も振り返った。また失敗したけど、それはもう仕方ない。今はただ前に進むだけだ。

 

 90km過ぎの次のエイドに着き、イスに座り込んだ。しばらくうつむいていると、横で簡易ベッドの用意を始めたのを見つけた。それを使わせてもらって横になることにした。横になると楽だけど、起き上がりたくなくなってしまう。
 そのうち、過去に優勝したこともある今回の優勝候補のSEKIYAさんがやってきた。まだまだ余裕の走りだ。一言声をかけてくれたけど、あっという間に行ってしまった。全く後を追える状態でなかったことが悔しかった。行かなくちゃ。
 何とか前へ進む気力が沸いてきたので、体を起こして歩き始めた。とりあえず歩いてでもいい。まだ時間はたっぷりあるのだから、時間いっぱいまで完走を目指そう。もしかしたら、夜になって涼しくなってくれば復活するかもしれないし。

 

 旧コリントス遺跡のそばのエイドを過ぎると、少しずつ走れる時間帯が増えてはきた。ここは去年までとは違う、初めて走るコースだ。舗装されてない道をしばらく走ると、見覚えのあるぶどう畑の中の道になった。電車が走っているのも見ることが出来た。暑い。でも何とか、しばらく走ったら歩く、というリズムでは進めている。

 

 ぶどう畑では、時々大きなトラックが走る。後ろに、労働者とたくさんのぶどうが積まれている。まさに収穫の時期なのだろう。この辺のノラ犬はぶどう畑の番犬なのか。時々追いかけられるけど、基本的に無視。しつこいやつは、「バウッ」と吠えてやったら向こうに行った。

 

 100kmは過ぎた。でもまだ半分にも達していない。時刻はもうすぐ16時。そろそろ涼しくなってきて欲しい。もう少しの辛抱だ。

 

 110kmのエイド。すこし人がたくさんいる村のエイドで小休止。そろそろ何か食べないと。食べられそうなものは・・・。これか。ヨーグルトに蜂蜜を入れて、口から流し込む。しばらく座っていると、女子トップのすーさんが走ってきた。まだ元気そうだ。さすが。そしてそのままトイレへ。
 さぁ、僕も頑張るか。すぐに追いつかれるだろうけど、とりあえず先に行ってまーす。

 

 しばらく行くと、短いけどきつい上りが待っている。さすがにこれは走れない。でも後ろからすーさんが走ってくる。ここからネメアまで、上りでは僕は歩いて置いていかれ、平坦と下りで追いつき追い越すというように併走して行った。
 きつい上りが終わっても、細かなアップダウンが続く。上りは歩く。でもその分、下りと平坦は走らなきゃ。

 

 日が傾き始めてきた。もう18時。さすがに涼しくなってきた。ネメアのエイドが近づいてくると、ようやく少し平坦になって楽になった。あそこではパスタがあるはずだから、しっかり休んでしっかり食べておこう。去年よりは少し早い到着。でも、つぶれ具合は同じくらい。
<CP 35 124km  18:38到着 11時間38分>

 

 預けていた夜セットを受け取り、着替えをしながらパスタをいただく。長袖とアームウォーマーを中にきて、上にこれまで着てきたゼッケンの付いたシャツを着る。「他にいるものは?」とエイドの人が聞いてくれるので、「もう一杯!」。結局パスタは3杯食べた。最後は少し食べすぎかと思ったけど、とりあえずお腹に入れておいた。すーさんが行った後も、しばらく休憩。そして、行かねばなるまい。さぁ、出発。

・ネメア〜サンガス山(160km付近)

 ネメアのCPを出ると、お腹がいっぱいでウエストポーチが閉まらない。しばらく歩いていると、横にはパスタを食べながら歩く外人ランナーが。しばらく一緒に歩いた後、ようやくウエストポーチが閉まったので、僕は走りだした。ちょっと先の峠の上りは歩いた。まだしばらくこんな感じが続くんだろうな。

 

 夜が近づいてきた。涼しくはなってきたけど、まだこれだけ着ていると、走れているときは少し暑い。
 去年ネメアの手前で僕を励ましながらしばらく一緒に走ってくれたハンサムなギリシャ人が後ろから来た。去年のことを覚えていてくれてうれしかった。彼はガス欠になったようだった。食欲は戻ってきたけど、脚が疲れて動かなくなっていた僕と一緒に歩いた。舗装されていないなだらかな上りを、時々話をしながら歩いていたが、このままずっと歩き続けるとかなり長いこと歩くことになってしまうと思い、「じゃ、ちょっと走っていくから」と言って走りだした。彼も後ろから付いてきたが、そのうちいなくなった。
 さすがに20時になると暗くなった。いよいよライト点灯。長い夜の旅が始まる。今年は半月なので、月明かりはあまり期待できない。

 なだらかな上りの未舗装路を越え、ようやく舗装路を下り始める。目の前にはハイウェイのオレンジ色の灯りが連なっているのが見える。あの先まで行くんだな。でも、今年は何だかガスっているように見える。天気が悪くなるのかもしれない。覚悟はしておこう。
 さぁ、下りは走れるぞ。その前に前との差をチェックしておこう。今の順位は10数番目で、すーさんまで10分ちょっと。2位のSAKAIさんまで1時間か。3年前にはこの下りですーさんに追いついたし、今年も追いつけないかな。そして、140kmの賑やかなパブのエイドに到着。おっと、先客が。
<CP 40 140.2km  20:43到着 13時間43分>

 

 年越しラン以来の夜の一緒のランだが、下りを利用して調子が良くなってきたのでさよならして先へ行った。
 コース上には蓄光性の目印が時々付けられていて、後は矢印を頼りに迷わないように進んでいくのだが、ちょうど矢印をペイントしている現場を目撃した。この速度で追加の目印を付けているということは、前の人たちは少し大変なのかな?
 そして、ハイウェイの明かりのずっと下の田舎道をしっかり走って進み、村の直前の上りは歩いたけど、主要CPのリルケアに到着。
<CP 43 148.5km  21:34到着 14時間34分>

 

 リルケアでは、もう一枚厚手の長袖を中に着込んだ。これだけ着ても暑すぎることはないくらいに涼しくなっていた。シートを確認すると、マックさんとの差が10分にまで急に縮まっているようだった。歩いているのかもしれない。
 しばらく行くと、人影を発見。「Hello!マーック」と後ろから声をかけると、「誰だ?」というように明かりがこっちに向けられた。一言二言話をした後、こっちは調子がいいのでそのままさよならした。
 いよいよサンガスの山に向かう。その前に九十九折りの長い上り坂が待っている。その手前の村のエイドで子供達と写真を撮ったりしてひと休み。もう22時を回っているのに、こんな時間にはしゃぎまわっていていいのかな?とすこし余計な心配。
<CP 45 154.1km  22:18到着 15時間18分>

 

 さぁ、いよいよつづらの上り。調子よくなってきたとはいっても、走ったり歩いたり。下のほうにはランナーのものと思われる明かりがゆれているのが見える。あぁ、あのくらい離れているのか。しばらく上っていくと、一つの明かりが近づいてくるのが分かった。あの賑やかな明かりはあの人しかいない。上りの途中にエイドがあったけど、ここで止まっているとすぐに追いつかれて先に行かれてしまう。どうせ歩いていたんだから休むことはない。先に行って待っていよう。
 ところが、上っても上っても後ろが来ない。さすがに疲れてきたのかな?そしてようやくハイウェイの灯りの上まで上り、サンガスの山の麓のエイドに到着。手袋などを受け取り、スープをもらってひと休み。すると、来た来た。じゃ、先に山登りしに行きますね。そのうちまた会うでしょうから。でも、これ以降追いつかれることはなかった。
<CP 47 159.3km  23:13到着 16時間13分>

 

・サンガス山〜テゲア(195km)

 初めて参加したときは、山道の入口を間違えて1時間ロスをした。そのときとはエイドの場所が変わっていて分かり易い。ガレ場の登り道に入っていくときには車のライトを照らしてくれた。さぁ、行くぞ。どうせ走れはしないけど。
 上りを走る筋力は残ってないけど、歩いて山登りをするくらいは大丈夫。少し速足気味で、でも時々立ち止まったりして、気持ちを切らさずに一歩一歩登っていく。道沿いには緑色と赤色のライトが置かれていて、上を見るとこの先登っていく道が分かる。はるか上の方まで続いている。あんなに登るの?
 毎年、帰りのバスの中から明るいサンガスを見ると、とても普通に登れるような所ではないことが分かる。真っ暗で何も見えないから登れるんだろう。ふと横から下を見ると柵などもないし、ちょっと足を踏み外すと・・・。知らないことは素晴らしいことだと思う。
 リズムよく、何とか頂上に到着した。スープをもらって、毛布をかけてくれようとしているのを断り、次は山下りだ。富士山からの下りを思わせる砂利道だけど、暗くて路面が見にくいので、時々大きな石を踏んでしまう。イテッ、イテッ、と言いながら、スピードを制御してくねくね道を下っていく。ただ、前より路面が固められていて下りやすくなっている気がした。

 山を下り終えると、しばらく平坦で走りやすい道になる。去年はここのエイドでチョコレートをたくさん食べて復活したんだっけ。今年は・・・ない。その代わりにスナック菓子を食べたらおいしくて、これからよく食べるようになった。これ以降よく食べたものは、このスナック菓子とチョコレート、特に洋ナシなどの果物が多かったように思う。飲み物はオレンジ味のアイソトニック飲料が多かった。あと、変わった物を見つけては食べさせてもらった。「何が要る?」と聞かれると、その時の気分によって「塩っぽいの」「甘いの」とリクエストした。珍しい甘いお菓子などもあり、いろんな物を食べるのが楽しかった。

 山を下ってから快調に走り、ネスタニに到着。ジャガイモがおいしかった。だんだん調子が良くなってきたけど、前との差はほとんど詰まらない。前はみんな順調に走れているのか・・・。でも今は粘って付いていくしかない。ネスタニで1人止まっていたので8番目になった。
<CP 52 172km  1:02到着 18時間02分>



 平坦で何もない道を行く。毎年この辺りでは満天の星空を眺めながら走る。でも今年は雲が多いみたいであまり星がよく見えない。進行方向横のオリオン座の周りはきれいに見えた。「あ、流れ星だ!」。あっという間の出来事だったので、願い事をすることはできなかった。もう一度、と思って走っていたけど、もう一度はなかった。
 そして、まだ快調なままテゲアに到着。これまでで一番早い。静まり返った村では、教会がライトアップされていたりできれいだ。前に道に迷ったことがあるところだけど、ちょうどビデオカメラのバイクが来たので、道案内をしてもらった。ビデオが回っているとちょっと頑張ってしまう。もういいよ、と思ってもずっと付いていてくれた。エイドでお礼を言ってさようなら。ここは気持ちよく走れた。
<CP 60 195.1km  3:42到着 20時間42分>

・テゲア〜スパルタ(245km)

 しばらく行くと、これまでの田舎道から幹線道路に出る。200km付近からは景色が一変して、ダイナミックな岩がせり立っているような、きつめのアップダウンがずっと続いていく。特に、まずは5kmくらい上りっぱなしの坂が待っている。果たして走って上り切れるだろうか。
 ここまで、前のランナーとは20分ほどの差。その前のSAKAIさんとは40分ほどの差が変わらずにきていた。でも、ここで一気に詰まってきた。上りの最後の方では前のランナーを追い越し、SAKAIさんとの差も10分くらいまでになった。やはり上りがきついのか?去年もここの上りでどんどん前に追いついていった。下りはみんなそれなりに走れるのであまり差が詰まらない。210kmくらいで、SAKAIさんの姿が見えた。下りなのに、かなりスピードダウンしている。また「Hello!Yuji〜.」と後ろから声をかけると、さっきのマックさんの時と同じ反応で面白かった。これで7番目。

 ずっとアップダウンの道が続くが、周りは暗くてほとんど見えない。時々通る車の明かりで少し見えるくらいだ。これまでで一番早いので、ここをずっと真っ暗な中走るのは初めて。だから周りが見えなくても、どんなところを走っているのかは大体分かる。これまでの4回のことを思い出しながら、まだいいリズムで走れている。エイドごとに前との差が少しずつ縮まっているのを確認でき、ますます気持ちよく走れる。英雄の像の辺りで、ようやく少しだけ空が明るくなり始めてきた。
<CP 68 222.6km  6:44到着 23時間44分>

 もうすぐあと20km。これまで、たくさんの思い出がある。今年は、この先どんなドラマがあるだろうか?
 現在5番目。でももう一つ前とは縮まり方が少ない。もう一つ上がることはできるだろうか?追いつけるとしたら上り坂だろう。あと上り坂はのこり3箇所。果たして・・・。
 まだ残りは少しあるので、無理にペースアップしないように、はやる気持ちを抑えながら走る。と、前の方にランナーのように見えるものがある。あれが4番目のランナーか?あと上りは2箇所。あの差ならいける。
 次の上り坂で前のランナーに追いつき、次の上りできっと離すことができただろう。後はスパルタに向けて下っていくだけだ。ペースダウンさえしなければいい。もう一つ前は50分差あるから、さすがにこの残りの距離では無理だ。もう一つで表彰台だったから少し残念だけど、ここまで上がってこれただけでも十分だ。

 

 残り20kmくらいで24時間経過。ふと、25時間台が頭をよぎる。20kmを2時間以内。このペースをキープすればぎりぎりいけるんじゃないか?ちょっと頑張ってみよう。そう思った。
 残り15kmくらいになると、家がポツリポツリと現れ始める。もう少し行くと、今年もパトカーがやってきた。スパルタまでついてきてくれるのだ。
 あと9kmのエイド。7:52到着。お、余裕ができた。ずっと下りだったとはいえ、ここに来てこんなペースで走れるとは思ってなかった。1km5分を少し切るペースだ。もうすぐ下りは終わるし、ちょっと足にきはじめたけど、これだけあれば大丈夫だろう。

 

 時々ぱらぱら雨が降る。スパルタに着くときには大丈夫だろうか?雨だとギャラリーが少ないんじゃないか?そういえば、まだ夜装備のままでライトまで持ったままだけど、ゴールの写真写りを考えると中の長袖は脱ぎたいな。最後のエイドで着替えて預けるか?いや、時間がもったいないぞ。そのまま行って、時間に余裕があったら直前で脱ぐか。
 余計なことを考えているうちに、子供達が自転車で迎えに来てくれて、ついて走ってくれるようになった。沿道の家々からは拍手や「ブラボー」の声。手を挙げて応える。あぁ、これがスパルタスロンだ。これが気持ちよくて走りに来てるんだ。

 スパルタの町の手前の最後の橋を渡り、最後のCPは素通りし、いよいよスパルタに到着だ。今年も来たぞぉ。

 

 いつもは疲労とホッとしたのとで歩いてしまっている上り坂も、今年はまだまだ普通に走れる。そしていよいよ最後の交差点を右に曲がる。各国の旗が吊り下げられていて、沿道からはたくさんの声と拍手が迎えてくれる。間もなくして、前の方にレオニダス像が見えてきた。雨が降った跡はあるけど、今は何とか降らないで持っている。

 

 いよいよやってきました!時間もまだ余裕がある。レオニダス像の前でギャラリーが拍手で迎えてくれる中、僕はもう一仕事あるのだ。「ちょっと待ってください」。脇にあったイスの前で、中に着ていた長袖を脱いだ。係員のような人に「像にタッチするんだ」と言われたけど、「分かってます。ちょっと待って」と言って着替えていると、分かってくれたようで、笑いながら待ってくれた。
 そして準備完了。改めて拍手が沸き起こる。きょろきょろ。やはり日本人は誰もいない。まだ9時前だもんな。仕方ないので、人の良さそうなかっこいい外人のお兄ちゃんに、写真を撮ってもらうようお願いしてカメラを預け、いよいよレオニダス像へ。

 タッチ!
 ゴールしました。途中であきらめそうになることがあったけど、今年も何とかたどり着きました。最高の気分です。

 
 
 

 いつものように、水を飲んだり、月桂樹の冠をかけてもらったり、完走プレートをもらったりとしているうちに、強い雨が降り始めてきました(写真の台座の濡れ方を見れば分かりますか?)。最後の方になるとギャラリーも引き上げ始め、自然にお開きになりました。僕ももういいので、救護テントに案内されて移動しました。普通に歩けるし、別に行く必要もないけど、しばらく雨宿りしようと思いました。その前に脱いだ着替えとかを持ってこないと。すると、別の係の人が荷物を置いていたイスごと持ってきてくれました。そして救護テントで横になりました。今年のスパルタスロンも無事終わりました。

<CP 75 245.3km  8:43到着  ゴールタイム 25時間43分21秒 4位 


 この先、もう少し書き足すと思います。しばらくお待ち下さい。


<ラップタイム等の記録>

CP 距離(km) 通過時刻 通過タイム 2008年 2007年 2006年 2005年
アテネ 0 7:00
13 50.0 11:03 4時間3分 11:02 11:09 11:09 11:43
22 コリントス 81.0 13:40 6時間40分 13:41 13:42 13:43 15:01
28 100.5 15:53 8時間53分 15:41 15:48 15:37 17:21
35 ネメア 124.0 18:38 11時間38分 19:05 18:51 18:31 20:09
43 リルケア 148.5 21:34 14時間34分 22:48 22:49 21:34 23:11
49 164.3 0:16 17時間16分 2:29 3:17 0:39 2:44
52 ネスタニ 172.0 1:02 18時間2分 3:17 4:16 1:38 3:37
61 テゲア 198.4 4:05 21時間5分 6:12 7:11 5:18 6:57
70 230.1 7:19 24時間19分 9:49 10:09 8:56 10:54
75 スパルタ 245.4 8:43 25時間43分 11:19 11:36 10:38 12:37

区間 経過時間 ペース
スタート〜81km 6時間40分
81km〜164.3km 10時間36分
164.3km〜245.4km 8時間27分