2008 SPARTATHLON
(スパルタスロン ΣΠΑΡΤΑΘΑΟΝ)
2008/9/26〜27 ギリシャ・アテネ→スパルタ (245.3km 制限時間36時間)
結果: 28時間19分28秒 12位 天気: 晴れ
大会公式HP : http://www.spartathlon.gr/ (ギリシャ語、英語)
日本語HP : http://www.r-wellness.com/spartathlon/index.html
スパルタスロンとは・・・
ギリシャのアテネからスパルタまでの245.3kmを制限時間36時間以内に走る大会で、多くのランナーの憧れの大会でもあります。今年2008年の出走者は約370人、また増えましたね。そのうち日本人が80人くらいです。大会について詳しくは過去の完走記や大会HPをご覧ください。
今年のスパルタスロンへ向けて・・・
この一年間はいろいろなことがありました。
去年の12月には肝臓の異常が見つかり、心不全から来ていることが分かりました。もう走れなくなるかと絶望した時期もありましたが、休養を取るようにして一応異常は見られなくなりました。その後も不安を抱えながらで、いまいち調子が上がりませんでした。そして6月末、今度は左足踵付近の疲労骨折がありました。1ヶ月半のランニング休止期間がありました。一応骨がつながったと医者に診断されてからスパルタスロンまではあと1ヶ月少々。突貫工事で何とかそれなりの体を作ってはこれました。でも去年と比べると、明らかに脚筋力不足。おまけに走るバランスもフォームも悪くてリズムに乗れません。
でも、今年はこのスパルタスロンのスタート地点に立てるだけでもうれしいのです。何度もこのスタートをあきらめかけました。今年はまたスパルタスロンを走れる喜びを感じながら、今の時点でのベストを尽くそうと思いました。
2008 スパルタスロン
・スタートまで
今年もヨーロッパ経由でギリシャ入りです。パリ経由のはずでしたが、前日にローマ経由に変更するよう頼まれました。おかげでビジネスクラス。ちょっとゆったり移動することができました。
ところが、24時間以上の移動を終えて選手村のホテルに深夜に到着すると、予約は明日からになっているから泊まる部屋がないとのこと。あっちこっちとたらいまわしにされ、強引な交渉の後に何とか知り合いの日本人と同室に入れてもらえました。思ったより疲れてしまいました。
でもここはギリシャ。何があっても驚くことではありません。ギリシャ人はとてもいいかげんです。
今年は休日の関係で、例年より一日早くにアテネ入りすることができました。そのため、翌日はゆったりできます。のんびりとあっちこっち寄り道しながら走っていたら、アテネ市街まで行ってしまいました。。選手村のホテルからは10kmちょっとでしょうか。アテネには何度も来ていますが、また新しい発見があったりして楽しめました。
そして、夕方に数百メートル離れたいつものホテルで受付を済ませました。
大会前日はエイドに預ける荷物のパッキングです。もう4回目ということで慣れてきてしまったため、準備がおろそかになっていました。あれがあればよかった、これがあればよかった、と思いながら、少ない荷物を準備して預けに行って来ました。
この日は脚を休めてのんびり過ごしました。そして一日中食べ続けていた気がします。今年預けたものは以下の通り。
・ 124km(ネメア) : ヘッドライト、反射板、サプリ類
・ 148km(リルケア) : 長袖Tシャツ、電池、サプリ類
・ 159km(サンガスの山の手前) : 上着、ロングタイツ、サプリ類
・ 172km(ネスタニ) : サプリ類、袋(ライトと長袖をスパルタに送る用)
他のランナーに比べると、預けるものは少ないと思います。
そして夕方からは説明会。終わってから自分達のホテルに戻りました。夕食を待っていると遅くなってしまうので、自分で用意していたものを軽く食べて早めに寝ました。徐々に実感がわいてきましたが、同時に不安も高まってきました。本当に走りきれるんだろうか?そして、今年は何が待っているんだろうか?
大会当日。朝5時に起床して、軽く朝食を取りました。スタート地点であるアテネのパルテノン神殿の下まではバスで移動します。昨日の夜はちょっと食べ過ぎたかと思ったけど、ちょうどいいくらい消化できているようです。
いよいよここまで来ることができました。これまでに、このスタート地点に立てることがこんなにうれしかったことはありません。今年もまたスパルタスロンを走れます。
パルテノン神殿の下のスタート地点では、今年もランナー全員が記念写真を撮ったり再会を楽しんだりしながら、夜明けのあとのスタートを待ちます。やっぱりいつの間にかスタート時間が近づいてきました。2連覇中のアメリカのスコットにも会えました。僕のことも覚えていてくれてうれしかったです。去年の男女優勝者と一緒に写真を撮りました。
・スタート〜序盤
いよいよ朝7時にスタート。始めは石畳を下っていく。夜中に雨が降っていたようなので、滑りやすくなっている路面に気をつけて慎重に走り出した。まずはあわてずにペースをつかむことだ。頑張らないけどそこそこのペースで、特に何も考えず、体が動きたがっているくらいのペースで走っていく。今回は序盤は時計をチェックしないで行くつもりだ。
実は、今日している時計は初めて走るときにつけるものだ。起きたときに時間を見ようとして時計のライトをつけたら、なんと文字が読めなくなっていた!電池切れが近いようだった。予備に時計を持ってきていてよかった。ということで、急遽つける時計を代えた。
交通整理されている夜明けのアテネ市街から、丘を越えて海沿いへ向かう。アテネ市街は通勤時間帯のようだ。徐々にペースが落ち着き、自分の位置取りが決まってくる。前のランナーを追いたくなってくるけど、ここは我慢我慢。同じ間隔をキープするように心がける。
10kmを過ぎると丘の上から真っ直ぐな長い下りを下り、海沿いに出ていく。朝のラッシュなのか、交通量は多い。今年も後ろから強い朝日が降り注ぎ、「いよいよはじまったか」と気持ちが高まってきたけど、抑えて抑えて、と自分に言い聞かせる。気持ちがいいと、どうしてもペースが上がってしまうから気をつけないといけない。
海沿いから工業地帯へ、そして郊外へと向かっていく。徐々に走りやすくなってくる。前のランナーとの間隔を保つように走っているけど、ちょっと速いかもしれないと思い始めた。時計を気にした方がいいのか?迷うところだけど、ここはそのまま流れにまかせよう。自分のリズムは良くなってきたので、この感覚を大事にして、早めにいいリズムを体に覚えさせてしまおう。
幹線道路から離れて、遺跡のある町へ入っていく。ここでは毎年、子供達が賑やかに応援してくれる。今年もそれを楽しみにしていたけど、公園を抜けても静かなままでちょっと残念。今年は元気な子供達とのハイタッチができなかった。
スパルタスロンのコースは、地面に書かれた黄色い「SP」の文字と矢印が頼り。「今年も頼むよ、矢印くん。ちゃんとスパルタまで連れて行ってよ」
そして、約245kmのコースの途中には75ヶ所のチェックポイント(CP)がある。そこで給水や給食ができ、あらかじめ荷物を預けておくこともできる。自分の補給したい食べ物などを置く人も多いが、僕は食べ物は何も置かなかった。大会が用意してくれたものを楽しみにしていた。飲み物は水やコーラ、オレンジジュースなど、食べ物はチョコやポテトチップ、ビスケットなどはどこにでもあり、フルーツやヨーグルト、蜂蜜、トーストなどなど、たくさんの物が用意されている。今年の序盤はいちじくのドライフルーツにはまった。りんごや桃みたいなフルーツもおいしかったなぁ。
細かなアップダウンを繰り返しながら石油タンクを抜け、いよいよエーゲ海沿いの景色のきれいなところに出て行く。そういえば、ここギリシャでは日本以上に石油が足りないらしい。営業していないガソリンスタンドや、とても混んでいるガソリンスタンドがあるなぁと思っていたら、ガソリンが足りなくて営業できないスタンドがたくさんあるからだそうだ。
いよいよエーゲ海。今年も強い日差しを受けた海面からの照り返しが眩しい。青い空に青い海。天気が悪いとの予報があったけど、やっぱりここはスパルタスロン。暑くなりそうだ。
しばらくエーゲ海沿いの道をくねくね、細かくアップダウンしながら進む。きれいな景色に気を取られ、ついついペースが上がってしまうところだ。今年はどうだったんだろう。
・序盤〜コリントス(81km)
しばらくエーゲ海の景色を満喫した後は、少し中に入って海が見え隠れするようになる。30kmを過ぎると、そろそろあまり前後にランナーがいなくなってきた。各CPでは、通過したランナーのゼッケンNo.と通過時刻を記録しているので、とりあえず自分の位置を確認した。十数番目みたいだ。いつの間にか思っていたより前の方に来ているみたいだ。まぁいいか。
そういえば、去年もこのあたりで逆走してくるおっちゃんがいたっけ。「あっ」今年も来た!しかもほとんど同じところですれ違った。今年も去年と同じように、「Hi!」と手を上げると、「がんばれ!」と返ってきた。しっかり走りこんでいそうな体をしているし、一体何者なんだろう??
40kmのCP。ここでは毎年日本人の応援組が待っていてくれる。今年も期待通り。「調子はどうだ?」「今の僕にはちょっと速いですかね?」「うん、ちょっと速いね」気をつけよう。そして、一口サイズのおにぎりをいくつかいただいた。やっぱりご飯を食べた方が力が出る気がする。これまではあまりそう意識したことがなかったけど、やっぱり日本人、なんだろうか。
CPでもらった食べ物は、内臓に負担をかけないようにちょっとずつ食べるようにしている。その場で少し食べた後は、クッキーなどのべたつかないものをいくつかウエストポーチに入れて、走りながらちびちび食べた。ラップにくるんでくれたおにぎりもそうした。
その先、青くて広いエーゲ海が満喫できる序盤のクライマックスだ。この景色は大好き。だらだら上りちょっと我慢のしどころだけど、気持ちは最高潮。ここでは足を止めて体を乗り出して写真を撮ってしまう。
まだまだエーゲ海沿い。そろそろ50kmのはずだ。ここで一旦時計をチェックしておこうか。あれ?もう50kmのCP?去年よりちょっと速いじゃん。50kmの通過は4時間2分。まだほとんど疲れは感じないけど、1km5分を切っているのはちょっとまずいんじゃない?
そろそろ正午。天気がいいからだんだん暑くなってきたぞ。でも今年はあまり汗をかかないな。トイレはとても近いからたくさん水分を補給する必要はあるけど。2年前は汗でデジカメを壊してしまったくらいだったのに。
60kmを過ぎ、去年はこの辺で優勝したアメリカのスコットに追いついたっけ。でも今年はみんな全体的に速いみたい。僕も去年よりいいペースになっているのに、去年より多くのランナーが前にいるみたい。去年より暑くないからかな?
このあたりから、3ヶ月前に疲労骨折した左足踵付近が少し痛む気がしてきた。再発?いや、ただ過敏になっているだけだ。ここでまた壊れてしまってもいい。行けるところまで行こう!
時々、カメラマンを乗せた車に併走される。きっとこの映像の一部が大会DVDに収録されることになるだろうから、ちょっと愛想良くしておこうか。しばらく手を振りながら走ったけどなかなか行ってしまわないので、そのうちあきらめて普通に走ることにした。でもちょっとカメラ目線。
所々で、ちょっとした町も抜けていく。町の人たちは時々拍手してくれる人がいるくらいで、ほとんど関心はない。でもその方が生活感が感じられて楽しい。
また石油会社を越え、最初の主要CPであるコリントスへ向かう。このCPではサポートとの接触が許されていて、日本人のサポートの人たちも待ってくれているはずだ。序盤の一区切りとして考えている。
ところが、コリントス手前の長い上り坂を前にして、脚はまだ疲れを感じてないけどおなかの辺りが痛くなってきた。でもこれはどこだろう?胃じゃない気がするし、肝臓か腹筋かな?去年の年末に肝臓を壊してから、どうしても肝臓に対して過敏になっている。そういえばさっきから出るものの色も濃すぎておかしな色をしているし、また肝機能が弱っているなんてことはないだろうか。前かがみ気味にしていないと辛いけど、食欲はあるし脚は元気なので、ウエストポーチを少し緩めにしたり背伸びをしたりして、おなかをリラックスさせようとした。
コリントスに向けての上りが始まった。おや?あの前に見えるのは優勝経験のあるブラジルのヌネスじゃないか?やっぱり前評判の高い人たちが前にいるんだな。上りの最後のあたりで追いつき追い抜いた。初めて話すけど、僕のことは知ってくれていたようだった。ちょっとうれしい。そしてこれで3番手に上がってきた。でも、前の2人はずっと前に行ってしまっているようなので気にしないようにしよう。
コリントスCPの前に、世界遺産になっているコリントス運河を渡る。昔の人がこの深い深い運河を手で掘ったという。「Excuse me!」観光客をかき分け、一旦立ち止まって写真を撮って、また走り去っていく。さぁ、この上り坂の先は81kmのコリントスCPだ。
コリントス到着は6時間41分で去年とほぼ同じ。去年は2番目だったけど、今年は3番目。しかも、前の2人はずっと前に行ってしまっているようだ。とりあえずここで一息だ。坂本さんたちにそうめんなどをいただいた。麺はするする喉を通りやすいし、おつゆの塩分がうれしい。でもあまり長いこと脚を止めることにしたくなかったので、あとは軽くセルフマッサージをする程度にした。
5分くらい休憩しただろうか。「ヌネスは行った?」おお、ちょうど彼が出発するところが見えた。よし、ついて行くか。おなかがちょっと心配だけど、去年までの3回よりは全然元気だ。さぁ、出発!
・コリントス〜ネメア(124km)
コリントスを越えると景色ががらっと変わるので、ここから第2ステージと考えている。急にのどかな道を進むようになり、しばらく周りがぶどう畑だらけになる。
ヌネスについて走りだしたけど、こっちの方がペースが速い。そのうちに後ろにも見えなくなってしまった。ここまでまずまず順調!と思っていたけど、やっぱりだんだんおなかのあたりが痛くなってきて、おなかを丸めて前かがみで走らないと辛くなってきた。CPで止まるたびに背伸びしたり体操したりしておなかを伸ばす。でも走りにくい。ペースが落ちてきた。そのうちに、後ろやってきた元気なランナーに抜かれた。ヌネスもやってきた。彼もちょっと疲れているのか?僕はちょっと休憩。
遺跡のある町を通り、ぶどう畑の中を抜けていくともうすぐ100kmを向かえる。ヌネスと2人で苦しんでいる。抜いたり歩いて抜かれたりを繰り返し、そのたびに声を掛け合い、でもそのうちに彼を置いていってしまった。追いかけてこなくなった。大丈夫かな?
100kmは越えた。でも脚も動かなくなってきてしまった。去年と同じような展開だ。全然進歩のない奴だなぁ。徐々に脚が止まり始め、少しの上り坂でも歩くようになってしまった。平坦と下りだけは走ろうと思っていたけど、それもそのうち出来なくなってしまった。でも、今回は自分からやめたりなしないぞ!必ず復活すると信じて、時間いっぱいまでは粘るぞ。今は我慢のときだ。CPでは今のうちにちゃんと食べておこう。とりあえず、この先の丘を上るところまでは歩くだろうけど我慢だ。
後ろから日本人が2人やってきた。まだまだ元気そうだ。頑張ってくれぇ。
丘を上り終えても、やっぱり走りだす気が起きない。それでも下りだけは無理やり気合を入れて走った。そうは言っても、ここは下り区間なわけではないのでほとんどが歩きだ。どんどん後ろから来るランナーに抜かれる。チームメートも元気そうにやってきた。山に沈んで行こうとする太陽の動きを見ながら、ぶどう畑の中を一歩一歩進んでいく。あと数km先のネメアの主要CPにライトを預けているけど、このまま歩いてでも日が暮れるまでにはたどり着けるだろう。ネメアではサポートも待ってくれているはずだ。まずはそこまで、だ。
去年はネメアの直前でさっき抜かれたチームメートに追いつかれて、最後は何とか併走してCPに到着したんだっけ。今年はそこでギリシャ人のかっこいいランナーに追いつかれた。一言かけたら、こっちのペースに合わせて「どうした?大丈夫か?」と心配してくれた。そして「いくぞ、いくぞ」と言ってくれた。これはついて行くしかない。何とか頑張って併走して、ネメアに到着した。いい人だった。
124kmのネメアのCPでは、食欲もあるし、とにかくいろいろ食べておくことにした。エイドのパスタ、サポート隊のうどん、エイドのピラフのようなものにおつゆをかけたもの、WGH
Pro、メダリスト、などなど。絶対復活してやるぞ。消化するまで長めに時間を取って、その間にしっかりマッサージ&ストレッチ。もう動きたくなくてずっとここにいたいけど、そういうわけにはいかない。今回は特に、前に進まないと次が見えてこないのだ。
・ネメア〜サンガス山(160km付近)
夜間用にヘッドライトとアームウォーマーを装備し、気合を入れなおしてCPを出発した。今年は少し肌寒い。去年は半袖でも平気だったと思ったけど、アームウォーマー程度ではまだ少し寒い。でも、まとわりつかれるようなべたつき感は少し緩和された。いよいよライト点灯。でもやっぱり上りは歩きだ。
今年は月が出ていないので、本当に真っ暗だ。外灯があるところはほとんどない。自分のヘッドライトだけが頼りだ。しばらく行くと、じゃり道のだらだらした上り坂になる。走ろうと思うと暗くて凸凹なので大変だろうけど、どうせ走れていないから路面が悪くてもあまり気にならない。とにかく次のCPを目指して歩を進めるだけだ。
真っ暗で人気のない寂しい道を進んでいき、CPが見えてくるとほっとする。こっちが話しかけると丁寧に対応してくれるいい人ばかりでとてもうれしい。片言の日本語で話しかけてくれる人もいる。
ひとまず上りが終わり、今度は下り区間に入った。下りは何とか走れる。ここを下っていったら、いつも賑やかなパブがCPになっている村に着くはずだ。楽しみだ。
村に入ると、今年も子供達が自転車で迎えに来てくれた。道案内なのか分からないけど、どこから来たのか?とか名前は何ていうのか?とかいろいろ聞いてくる。英語に混じってギリシャ語でも聞いてくる。さすがにそっちは分からない。野良犬もついてきた。蹴っ飛ばしてしまいそうだ。ほえながらついてくるから、こっちもほえ返した。そうしたら向こうに行った。おかげで目が覚めた。
おぉ、いつも通り賑やかなパブが見えてきた。店の前には子供達がたくさんいる。いいんですかぁ、もう夜ですよぉ。
長い下りを下りきり、しばらく平坦な夜道を進む。何とかかろうじて走れている。去年より早くに復活したか?でも復活というほど力が湧いてきているわけではない。最後にきつい上りを上れば148km、リルケアの主要CPだ。
リルケアまであと2km少々のCP。もうすぐサポートがいてくれるであろうリルケアなので、ここは軽くパスすることにしよう。「小山上る。大山じゃないよ。」変だけど日本語だ。リルケアの手前でちょっと坂を上るということらしい。「I
am 柔道ファン」変わった人だなぁ。柔道はギリシャで人気あるのか聞いたら、彼はそうだと言うけど、もう一人はくすっと笑っていた。本当のところはどうなんだろう?
もちろん最後の小山は歩いて上った。CPの前で待っていた子供達には「急げ、急げ」と言われたけど、無理無理。リルケア到着。おにぎりをいただいた。もっと塩気が欲しかったので、自分で持っていた塩を振って食べた。そして夜間装備、長袖一枚を追加。ますます冷えてきたところだったので、ちょうどいいタイミングだった。
リルケアで小休止した後、出発。しばらく頭上のハイウェイを見ながら平坦な夜道を進み、いよいよ最大の難関であるサンガスの山登りへ向かう。ハイウェイのオレンジ色のライトは明るいけどはるか高いところにある。あそこまで上ってから山登りか・・・。
まずはつづらの上り坂。頑張って走ったり歩いたりして上った。去年は満月に照らされて谷がよく見えたけど、今年はほとんど何も見えない。でもその代わり星はとてもきれいだ。たくさんの星がまたたいている。流れ星は見えないかなぁ。
ハイウェイの上まで上ったところのCPでサンガスを越えるための装備と体力を蓄える。長袖をもう一枚追加し、ロングタイツもはいた。そして温かいスープとコーヒーももらった。寒いからと、これから眠くならないようにとでだ。
・サンガス山〜テゲア(195km)
ちょうどサンガスのふもとのCPにはリタイア者収容のバスが止まっていた。スパルタに送られる途中のようだ。CPを出発していよいよサンガス越えへ。ところがなかなか登山道の入り口にたどり着かない。おかしいなと思っていると、これは3年前に間違えた道だということに気がついた。もう一度CPまで引き返した。そこにはバスがいなくなっていて、その後ろに登山道の入り口が口を開いて待っていた。ここの道が去年とちょっと変わっていて、気付かなかった。危ない危ない。数分のロスで済んでよかった。気を取り直して山登りだ。
ちょうど山登りは外人ランナーと一緒に入り口から入って行った。始めは一言二言会話をしたけど、そのうちそんな余裕もなくなり、でも「おぉ」とか足を取られて滑ると笑い合ったり、励ましあいながら一緒にはるか頭上の頂上を目指した。この山登りは、走るどころか歩いて上るのも大変なくらいだ。おまけに、今は夜だから周りがよく見えなくてまだいいものの、狭い足場の横には柵も何もなくて、足を踏み外したらはるか下まで転がり落ちてしまいそうだ。明るいときだったらもっと怖かっただろう。よくこれまで大変な負傷者が出なかったものだ。
緑色のわずかな誘導等を頼りに必死で登り続けること数十分。ようやくサンガスの頂上に到着した。CPの人たちはしっかり着込んでいて、我々が到着すると毛布をかぶせてくれる。寒いんだな。とりあえず温かいコーヒーを一杯。
現在の順位は20番目前後。さっきまでは下がっていく一方だったが、ここでは前のランナーに追いついていてちょっとびっくりした。ちょっと周りよりペースが良くなり始めたのかな?長いこと休んでいるランナーを横目に、CPから長居せずに出発。今度はガレ場の下りだ。下りもやっぱり走るのは難しい。足元が悪いうえに暗くて見にくいので、転んでしまわないようにここも歩いて確実に下って行った。それでも、後ろから追ってくるヘッドライトが離れていくのが分かる。
ずっとあせらず我慢して下り続け、ようやく平らな道になると不整地もおしまいになった。舗装路ならば走れそうだ。去年はここから大復活したんだっけ。今年はどうだろう。今年もここから復活することを期待して走りだしてみた。うん、なかなかいい感じだ。ふもとのCPでは、気合を入れるためにちょっと多めにチョコレートを補給した。さぁ、行くぞ!
ここまでしばらくは走れそうにない道ばかりだったけど、ここからは少し下っているような気もして走りやすい気がする。いい気分で気持ちよく走れるようになってきた。でも、調子に乗ってとばしすぎたりしないようにしないといけない。まだあと80km近くも残っているのだ。あくまでもリズムよく走るだけ。
次の主要CPは172kmのネスタニになる。ちょっと坂を上って小さな町に入った。真夜中なので静まり返っているけど、CPのレストランには人の気配があってほっとする。サポート隊も待ってくれていた。ちょうど調子がいいから、このリズムを崩さずすぐに先へ進みたい。でもサポートを受けられるポイントは数が限られているので、ここは少し気持ちを落ち着かせて小休止することにした。いつものチョコやポテトチップに加え、パスタも食べておいた。トイレも行っておいた。ようやくおなかが楽になってきた。
さぁ、リフレッシュして出発。またこの先も平坦な道が続くから、焦らずリズムよく走るぞ。
CPごとに前のランナーとの到着時間の差をチェックする。一区間で10分以上縮まっていることも珍しくないくらいで、それを見るたびにモチベーションが上がってくる。始めは1時間以上の差があったランナー達をどんどん追い抜かしていった。さっき抜かれたランナー達が苦しんでいた。
それにしても冷える。もしかしたらサンガスの頂上よりも寒いんじゃないかと思うくらい。途中で会った歩いてしまっている日本人ランナーはとても寒そうだった。こっちは走れているからそこまでではないけど、ちょっと上着を貸したりするほどの余裕はない。
今度は、だんだん右足の脛の辺りが痛くなってきた。ここは先月の走り込みの間に傷めた箇所だ。直前に走る量を減らしたら痛みが引いていたけど、ここに来て再発。まだ我慢できる程度ではある。
195km付近では、テゲアの村の中を抜けていく。ここはいつも道に迷うところだ。でも今年は地面に矢印がしっかり書かれているし、緑色の誘導等が今までよりもちゃんとついていたりしたので、ほとんど迷うことがなかった。今年も迷子にならないか心配していただけに、ありがたかった。
去年は200kmの手前くらいから明るくなり始めてきた。今年はまだ6時すぎ。夜明けまでにはもう少し時間がある。
・テゲア〜スパルタ(245km)
テゲアを過ぎ、200km手前あたりからはまた雰囲気ががらっと変わる。ここからスパルタまでは、日本ではありえないようなダイナミックな景色の中を行き、ずっとアップダウンが続く。現在の順位は12番目まで上がってきた。でも、この前のランナーとは1時間以上の差があり、全然縮まっていないようだ。前のランナー達もちゃんと走れているんだろう。それだと仕方がない。あとは、このままちゃんと走ってゴールまでたどり着くだけだ。
まずは5kmくらい続く長い上り坂。途中で、いよいよ空が明るくなり始めてきた。山のシルエットが美しい。今日もいい天気になりそうだ。
この長い上り坂は何とか走り切ったけど、ちょっと脚が重たく感じられてきた。ここからは去年のようには行かないかもしれない。下りはまだ走れているけど、上りは時々歩きが入ってしまう。夜が明けてきてもまだ寒いので、CPでは温かいスープやコーヒーをもらう。でも場所によってはお湯がないところもあった。CPにいる人も寒そうにしているのに。
脚も疲れてきたし、右足の脛の辺りの痛みも辛くなってきた。仕方がない。念のために持っていた痛み止めを飲むか。初めて飲む痛み止め。ちょっと抵抗があったけど、迷っていても仕方がない。お願い!
さぁ、あとはどこでこの夜間装備を脱ぐかだ。スパルタに送り返すように荷物を詰める袋は持って走っているからどこでもいいんだけれど、これらを全部脱ぐのは面倒なので気合を入れないと。
朝9時を過ぎて、さすがに少し汗をかくくらいになってきた。ちょうど大きめのCPに到着したので、ここで再び軽装になることにした。やっとヘッドライトを外せる。ずっと頭が締め付けられていたのでちょっと痛かった。さぁあとはスパルタのレオニダス像を目指すだけだ。あと20km。これまでの距離を考えるとあとわずかなような気がしてしまうけど、まだもうひとふんばりしないといけない。
多分最後の上り坂。大きな岩の切通しを歩いて上っていると、大自然の中では自分がとてもちっぽけに感じられてしまう。こんな景色は日本では味わえないだろう。そしてこの上り坂を終えると、あとはほとんど下るだけ。気持ちは盛り上がってくるけど、まだ早い。スパルタ市内のビクトリーランをちゃんとかっこよく走るためにはまだ抑えないと。はやる気持ちを抑えながら、もう頭の中は何が何だか分からなくなってきている。
昨日からずっと帽子やヘッドライトをかぶっていたので髪の毛がぺったんこ。エイドでスポンジをもらって髪をぬらして髪型を整える。感動のゴール写真をかっこよく撮ってもらいたいから。「写真のためにかっこよくしないとね。どう?かっこいい?」「Good!」何だか英語も絶好調。もうめちゃくちゃな英語だと思うけど、何とか通じてうけていた。
下り始めて残り15kmくらいになってくると、ぽつぽつと民家が現れてくる。そろそろパトカーが先導をしにやってくる頃だろうか。向かう車や追い越す車はクラクションで出迎えてくれる。いよいよスパルタが近づいてきたと思えるようになってきた。
あと10kmを切って、残るCPは2つだけ。あぁ待ち遠しい。子供達が元気に迎えてくれるだけでなく、そこらじゅうの家から拍手の音が聞こえてくるので手を振って応える。脚はきつくなってきたけどいい気持ちだ。
残り4kmのCP。いよいよスパルタだ。子供達が自転車で迎えに来てくれて、前や横をちょろちょろ走ってくれる。併走してくれているバイクの警官に注意されながら。
そして最後のCP。もう食べる必要はない。やっとここまで来れた。もう完全に安心してしまった。ほっとした。水を一杯飲んで落ち着き、いよいよビクトリーランだ。
スパルタ市内に入り、歩道や家などいろんなところから「ブラボー!」と拍手で迎えてくれる。こっちはずっと手を振りっぱなしだ。今年はちゃんと最後に力をためていたので、ゆっくりでもそれなりに走れている。一応カッコついたかな。
あぁ、あの角を曲がれば最後の直線だ。レオニダス像が見えてくる。さぁ、やってきました。今年も帰ってきました。
「ブラボー!」「ブラボー!」 「ありがとう!」「サンキュー!」「エフハリストー!」 日本人の知った顔も見える。あぁ、リタイアしちゃったのか。さぁ、最後は誰にこのカメラを託して写真を撮ってもらおうかな。
やっと、やっと、今年もたどり着いたレオニダス。気持ちを落ち着かせて、一歩一歩を踏みしめながら、レオニダス王の足にタッチする。これがゴールだ。今年は4回目にして始めて、一段上ってレオニダス王の足にキスするポーズをした。これが本来の形だと聞いていたから。熱くて冷静。これがどの競技でも最もパフォーマンスのいいときだ。まさにそんな状態。
「やった〜!」 初めて声を上げて喜んだ。苦しいときにも我慢して希望を失わなかったこと、もちろんそれにはたくさんの支えがあったこと、いろいろなことが瞬間的に思い出された。たくさんのカメラのシャッターが切られ続けている。こんな瞬間はいつまで続いてくれてもいい。
感動覚めやらぬ中、今年もカップの水を飲まされ、月桂冠をかぶせてもらい、記念の盾をもらった。しばらくカメラに向かってポーズをとり、横の医務室のテントへ連れて行かれた。足は痛いけど自力で歩けるし、早くホテルに行きたい。汗を流してから、これから来るランナーをここで待っていたい。
しばらくベッドで寝かされた後、今年はスムーズにホテルに連れて行ってくれた。あぁ、テントでもらったぶどうがおいしい。
ホテルでシャワーを浴びた後、眠くなかったのでまた外に出て、これから次々とやってくるランナー達のゴールを見ていました。みんなとてもうれしそう。そりゃそうだ。まさにみんなが英雄だ。
さすがに夕方には眠くなってしまい、ホテルで仮眠を取りました。おかげで制限時間ギリギリのゴールは見れませんでした。この時間帯はまた特別ですが。
そして夜には町をあげてのお祭りで歓迎してくれます。完走者全員の名前も読み上げられるけど、やっぱり表彰台での表彰は特別でしたね。いつかはあそこに・・・。
翌日はしばらくのんびりした後、アテネまでバスで送ってくれます。その夜は、毎年恒例のメンバーでの夕食会。とても楽しみにしていました。今年もビーチ近くのシーフードレストランでおいしく楽しくいただきました。
アテネに帰ってきた翌日は、夜に市街の立派なホテルで表彰式がありました。完走者全員がメダルと完走証をもらえます。そして、各国のランナー達と交流しながらの食事。年々知り合いの外人ランナーが増えてきてうれしいです。今年も楽しく過ごせましたが、夜遅くまでやっていたのでとても眠くなってしまいました。
今年のスパルタスロンは、準備不足で不安の中のスタートでした。でもスタートできただけでもうれしく、しかも完走でき、おまけにそれなりの時間でレオニダス像までたどり着くことができ、本当にほっとしました。またとても楽しく過ごすことができ、夢のような1週間のギリシャの旅でした。
<ラップタイム等の記録>
CP | 距離(km) | 通過時刻 | 通過タイム | 2007年 | 2006年 | 2005年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
アテネ | 0 | 7:00 | |||||
13 | 50.0 | 11:02 | 4時間02分 | 11:09 | 11:09 | 11:43 | |
22 | コリントス | 81.0 | 13:41 | 6時間41分 | 13:42 | 13:43 | 15:01 |
28 | 100.5 | 15:41 | 8時間41分 | 15:48 | 15:37 | 17:21 | |
35 | ネメア | 124.0 | 19:05 | 12時間05分 | 18:51 | 18:31 | 20:09 |
43 | リルケア | 148.5 | 22:48 | 15時間48分 | 22:49 | 21:34 | 23:11 |
49 | 164.3 | 2:29 | 19時間29分 | 3:17 | 0:39 | 2:44 | |
52 | ネスタニ | 172.0 | 3:17 | 20時間17分 | 4:16 | 1:38 | 3:37 |
61 | テゲア | 198.4 | 6:12 | 23時間12分 | 7:11 | 5:18 | 6:57 |
70 | 230.1 | 9:49 | 26時間49分 | 10:09 | 8:56 | 10:54 | |
75 | スパルタ | 245.4 | 11:19 | 28時間19分 | 11:36 | 10:38 | 12:37 |
区間 | 経過時間 | ペース |
---|---|---|
スタート〜81km | 6時間41分 | |
81km〜164.3km | 12時間48分 | |
164.3km〜245.4km | 8時間50分 |