2008さくら道国際ネイチャーラン

 2008/4/19〜20  愛知県名古屋市〜岐阜県〜富山県〜石川県兼六園(250km)

 天候 : 晴れ
 記録 : 143km荘川桜 リタイア

 大会HP : http://shirotori.gujo.to/sakurainr/HP/sakurainr1.htm


 さくら道国際ネイチャーラン

 主 旨

太平洋と日本海を結ぶ266kmの道を、桜のトンネルで結ぼうと決意した男がいた。
御母衣ダム工事で、水没する山寺の樹齢400年を数える桜の古木が移植され、見事に蘇ったその生命力に感動したからである。

その男は名古屋と金沢を往復するバスの車掌・故佐藤良二氏である。
彼はバスの走る道沿いに、桜の苗木を黙々と植え続けた。
乏しい蓄えを注いだ。少ない休暇を使った。

2000本も植えただろうか。男は病に倒れた。
志半ばで力尽き、逝った。47歳の短い生涯だった。
清貧という言葉が改めて見直される今、「人の喜ぶことをしたい」と病魔に侵された我が身を顧みず、無償の行為を貫いた佐藤氏の生き方は、貧しくとも豊かな心を持つ、人間の幸福な姿を問いかけてくれる。

佐藤氏が夢みた″さくらのトンネル″を、走り抜けるという形でその遺志を受け継ぐとともに、「太平洋と日本海を桜でつなぐ」という大事業の完成に少しでも寄与できればと考えて、今回『太平洋と日本海を桜でつなごう 2006さくら道国際ネイチャーラン』を開催する。

 〜大会ホームページより

 毎年参加し続けているさくら道国際ネイチャーランも今年で4回目。ところが今年のさくら道ネイチャーランは、大会に向けて健康上の問題からいくつものハードルがあった。それでも何とかスタート地点に立つことができ、もうそれだけでうれしくて仕方がなかった。成績は二の次。今回は無理せず楽しんで走ろうと思っていた。

 大会前日

 今年も名古屋城近くのホテルで前日午後から開会式。今年で4回目の参加になるので、この辺はもう慣れてきた。ここではまた同窓会のようになり、久しぶりの人たちとお話しすることができる。あっという間に時間と過ぎ、例年と同じような行動をして翌日のスタートに備えた。
 

 さくら道国際ネイチャーラン

 朝起きると、天気予報どおり前日の雨はすっかり上がり、朝からいい天気に恵まれた。これは暑くなりそうだ。自分のスタートは最終グループの朝6時15分。5時半頃に名古屋城敷地内の佐藤桜のスタート地点に着いた。名古屋城敷地内へはランナーしか入ることができないが、門の前には今年もたくさんの応援の人たちが来てくれていた。そして今年も約100人のランナー達がさくら道のスタートを待った。

 

 朝6時から3分おきに各グループがスタートしていく。そして6時15分の最終グループで自分達がスタート。まずは佐藤桜に触り、いよいよ今年もさくら道に向けて走りだす。今年も何とかこの道を走ることができるんだ。感無量、眩しい朝日の中、名古屋城をぐるっと回ってから金沢の兼六園に向けてスタートした。

 

 毎年途中で疲れてペースダウンしてしまうので、今年こそは今までよりもゆっくり走って行く。そう決めていたので、いつものように前に飛び出したりせず、まずはゆったりとしたリズムを作るように心がけた。始めは名古屋市街地で信号が多くてリズムがつかみにくい。特にあせってはいけないところだ。

 

 今回はあまり時計を見ていないし、タイムもほとんど気にしなかった。まず5km行くと始めのエイドステーション。その先5km位おきにあるエイドで時計はみたけど、去年よりゆっくり走っていることは間違いなかった。去年は無理にゆっくり走って足が詰まる感じがしたけど、今年はあまり違和感なく走れている。ただ単に速く走れなくなっただけかもしれないけど。
 序盤は、同時にスタートした数人と時々話しもしながら集団になって進んでいく。これが30kmくらいまで続いた。始めの30kmは特に特徴もなく、岐阜を目指すほぼ平坦な道。

 

 30kmくらい進んで岐阜を過ぎてようやく体がほぐれてきたのか、ペースを上げたくなってきた。でもここで飛ばしてしまうと絶対に最後まで持たないので、我慢我慢。初めて走ったときは電車が走っていた線路は廃線になり、そしてついに線路までなくなってしまっていた。

 

 岐阜を過ぎると少しずつアップダウンが現れ始めてきた。でも今年は無理のないペースで進んでいるせいか、去年までよりもかなり余裕がある感じがする。
 天気はとてもよくて徐々に暑くなってきた。時々吹く向かい風が心地いいくらいに感じられる。そのうちに手袋は外し、アームウォーマーはまくった。
 何ヶ所かのエイドでは今年も自分のことを覚えている人がいた。今年もまたさくら道に帰ってきた実感がしてうれしかった。
 60km手前で関、美濃を通過。今年もいつの間にか先頭に立つようになっていた。まだ全然無理はしていないつもりだし、去年よりもまだ疲労感はない気がしている。まだ序盤、ここで疲れてしまっていては話にならない。一度ブログにメールで記事を投稿したけど、どの漢字が正しいのか分からなかった。全然難しい漢字ではないのに。頭の回転はかなり鈍くなっているようだ。これは上手く血液を体のほうに回せているからなのだろうか?

   

 今年もみちくさ館のエイドで道草。トイレのタイミングも予定通りだ。いい天気なので長良川沿いの景色はきれい。
 そろそろ心配になってくるのは脱水症状。早め早めの給水と給食を心がけないと苦しくなってしまう。まだ余裕のあるうちに各エイドで少しずつ水分を摂り、食べ物も計画的に少しずつ補給していった。一口ずつのフルーツやパン、おにぎり、大福、どら焼き等々。消化に負担をかけないように少しずつ、数kmかけて食べきるくらいで食べた。そして途中からは200mlのペットボトルに各エイドで水を汲んでもらいながら持って走った。口に含んでもいいし体にかけてもいい。最近は手にものを持って走るのに違和感を感じなくなったけど、腕が疲れてきたのはこのせいだったのかも知れない。いつもは買い物バッグを右手に持って走っているけど、途中から左腕が疲れてきた。

 

 ある程度北上してきたけど、まだ桜の木は緑色か少しだけピンク色が残っているくらいだ。今年は去年より桜が散るのが少し早いみたいだ。多分日なたにある木は新緑、陰りがちな位置にある木は葉桜、といった感じだろうか。
 今年もエイドの人たちと楽しくお話させてもらった。まだ話していたくなってしまう事がよくあるけど、まだこの辺りで長居して足を止めてしまうと走るリズムが崩れてしまう気がするので、残念に思いながらも先を進むしかない。まだ3分の1ほどしか進んでいないのだ。

 

 80km近く走ってきた。ここまで去年よりゆっくり来ているとは言うものの、実は10分ちょっとしかゆっくりにはなっていない。しかも気温は23℃を示す表示も出ているし、強めの向かい風も時々吹いてくる。これらが少し頭の片隅に引っかかり始めてはいた。でもまだ疲労感はないしリズムもいいので、このリズムを崩したくはなかった。
 そろそろ所々にピンク色の花をつけた木が見えるようになってきた。桜の品種によってなんだろうが、いよいよこれからという気にさせられてきた。

 

 この辺りのコース沿いを走る電車は長良川鉄道。ときどき一両の電車がことこと走っていく。この風景に見事にマッチしている気がする。
 郡上八幡を過ぎ、もうすぐ100km地点を迎える。ところが...ふくらはぎに疲労を感じ始めた。いよいよ来始めたか。思っていたよりちょっと早い気がするけど、早めに手を打っておかないと手遅れになってしまうので、躊躇なくペースを落とした。それでも軽い上り坂でもちょっときついので、そういうところでは歩きも入れ始めた。ちょっとまずいかも。

 

 100km付近は9時間くらいで通過した。これは一応予定通りのタイムではある。でも内容が全くよくない。完全にペースダウンし始めての9時間通過だ。それでも、しばらくだましだましで行けばそのうち回復してくるだろうと軽く考えてはいた。早めにペースダウンさせたナイス判断だ、と。もうすぐ第1チェックポイントの白鳥町があるので、とりあえず一区切りつけて行こうと考えた。
 とりあえず白鳥町には到着した。駅前のエイドまでの商店街をボーイスカウトの子供が併走してくれるけど、トップ到着なのに走ったり歩いたりしている。なんとも情けない姿だ。町の人たちも声をかけてはくれるものの、足取りが重くなってしまっていてなんとも申し訳ない。そしてようやく駅前に到着。

 

 足取りは重くなってしまったけど、食欲はたくさんあるし元気は元気だ。脚がしばらくお休みしている間に燃料はたくさん補給しておこう。そしてエイドを出ようと離れた瞬間、ついに後ろのランナーがやってきた。元気な足取りで到着したのはチームメイト、去年のチャンピョンだ。そのうちに誰かが来ることは分かっていたのでびっくりはしなかった。時々一緒に走ることもあるチームメイトが元気で来てくれたことにうれしく思った。一声かけて、自分はゆっくり先を目指し始めた。またすぐに追いかけてくるだろうから会うことになるだろう。
 しばらくまた走ったり歩いたりしていると、程なく後ろからランナーがやってきた。それも一人ではなく、韓国人ランナーもやってきた。さぁここからは完走狙いの走りに切り替えようか。走る背中を見送るのは寂しい気持ちがあるけど仕方がない。

 

 そのうちに脚が回復してくれることを願いながら進む道は、白鳥を過ぎて少し雰囲気が違ってくる気がする。だらだらとした上りもちょっと大変になってくる。それでも桜の木はどんどんピンク色が鮮やかになっていき、「これは走らないといけない」という気持ちを強くさせられる。気持ちは走りたいのだけど、どうしても脚に力が入っていかない。時々頑張って走りだしてはみるものの、すぐに足の力が抜けてしまう。力が入らない。仕方がないから歩くことにするのだけれど、それでも上り坂はかなりきつく感じる。これはかなり重症なんじゃないだろうか?大抵は歩くことならそれほど問題はない。しかもまだこの段階だ。「これはまずいかも・・・」と思いながら何とか歩を進めるけど、どんどん現れてくる桜は満開になっていき、コースは最高のさくら道になってくる。

   

 だらだらとした上り坂を歩き続けるが、一向に脚は回復してこない。ちゃんと食べれてもいるし、早めにペースを落としたつもりだったのに・・・。でも、長いこと歩いている気がするのに、その次に後ろから追いかけてくるランナーがなかなか来ない。そんなに差が開いていたのか・・・。そんなに速く走った気はしないのに。あぁ、桜が満開できれいだ。

   

 徐々に上り勾配が厳しくなってきた。この坂道の頂上であるひるがの高原まではあと10kmほど。ここに薄めの上着やヘッドライトを預けてある。ずっと歩き続ければ、ちょうど日が暮れることに到着できるくらいだろう。でも、エイドで歩を止めてしまうとライトを受け取る前に日が暮れてしまう。そうは思っていてもエイドで長居をしてしまった。少しずつ気温も下がってきて体が冷えてき始めたので、豚汁などをいただいていた。後ろからは徐々にランナーがやってき始めた。みんなびっくりして心配してくれる。ちょっとうれしいけどどうにもならない。

 

 いよいよ日が暮れてきて寒くなってきた。それでも未だに防寒着を受け取れず、スタート時の格好で歩き続ける。半袖Tシャツにアームウォーマー、ハーフタイツで5℃近くの中を歩き続ける。寒い寒い。早く防寒着を受け取りたい。ひるがの高原には何を預けていたっけ?
 もうすぐもうすぐと思ってはいるものの、なかなかたどり着かない。そしてついにライトが必要になるくらいに日が暮れてきた。脚が動かなくても、あまりに寒いので走って熱を発生させるしかない。あぁ、月がきれい。今日は満月だ。
 そしてようやく長良川源流の看板。分水嶺公園にひるがの高原のエイドがある。何とかたどり着いた。早くストーブに当たって上着を着ないと。

 

 120km過ぎのひるがの高原のエイドでは、今年も僕のことを覚えてくれていた。しかも、もうへばっているという情報を聞いてちゃんとつけるかどうか心配してくれてもいた。とてもうれしかった。僕が到着したらとても喜んでくれた。だからもう「さくら道ネイチャーラン」は外せない大会になっているのだ。
 ここでも豚汁やスープをいただいてしばらく暖まった。ようやく防寒着を受け取ることができたのだが、ここに預けていたのはアンダーアーマーの長袖一枚だけ。ちょっとがっかりした。さすがにこれだけではこの先厳しそうだ。それでもここからはしばらく下り坂。何とか走れるだろうから、少しは暖まることができるだろう。受け取ったヘッドライトをつけて、別れを惜しみながら先へ進むことにした。とりあえず目指すのはあと20km先の荘川桜だ。
 そろそろ今回から新設された白鳥町スタートのハーフの部のランナーが元気よく追いかけてきた。全然スピードが違うが、それはもう分かりきったことなので気にならない。一瞬びっくりしただけ。
 次に到着したエイドでは、今年も焼肉を食べながら宴会をしていた。後ろから追い上げてきたランナーと一緒にその輪に入れてもらい、お肉をいただいた。おいしいぃ。あとの2人はビールももらっていたけど、さすがに僕にはそれは無理。そこからしばらくはその2人に連れて行ってもらった。3人で話をしながら走った。一人で走るよりかなり楽に感じる。

 

 しばらくは何とか走っていけたものの、やっぱりそのうちにきつくなってきた。トイレにも行きたくなったので、その間に先に行ってもらった。その後は思った通り、また歩き中心に逆戻り。歩きだすとまた体が冷えてくる。
 月明かりは明るいものの、辺りは真っ暗。なんとか湖沿いの道に出たようだ。すると、また一層風が冷たくなってきた。体を震えさせながら歩を進めた。荘川桜はまだか?

 もう寒くて凍えそうになったとき、ようやく荘川桜が見えてきた。暗くてほとんど見えないけど、月明かりが当たってその巨木がかすかに見える。「あぁ、やっと着いた」。そのすぐ先にエイドのテントがある。第2チェックポイントだ。
 とりあえずストーブに当たらせてもらい、温かいスープをいただく。でも、しばらくストーブに当たっていても体が温まってくる気が全くしない。芯から冷え切ってしまっているようだ。ちゃんとした防寒着はこの20km先の白川郷。そこまでこの格好でいけるはずがない。
 ストーブの前で毛布をかぶって丸まっていると、他のランナー達からカッパやらポンチョやらをいただいた。これで少しは寒さがしのげるだろう。でも体の芯がなかなか暖まってこない。気持ちが切れたままでなかなか戻ってこない。本当にこの先すすめるのか?自問自答の時間が過ぎていく。後ろから来るランナー達を次々と見送る。みんな心配してくれるし、みんな苦しんでいる中で先を目指す姿を見ていると申し訳ない気持ちになってくる。でもなかなか先へ進む決心ができない。中途半端に進んでしまうと、凍える寒さの中さまようことになり取り返しのつかない状態になってしまうんじゃないかという不安が消えない。

 今回の大会を向かえるに当たって、体調に関していろいろなことがありたくさんの人たちに心配をかけてしまった。それでも無理やりのような形で今回の大会に参加した。もうこれ以上心配をかけ続けるわけにはいかない。ストーブの前で葛藤を続けること2時間30分、エイド閉鎖まで1時間30分を残して、リタイアすることを決心した。
 今年のさくら道は終わった・・・。自動的に来年のさくら道もほぼ終わったようなものだ。リタイアした翌年は選考順序が後ろに回されるとのことで、翌年は走れることはほぼない。今年はこの後、金沢に行くこともできない。白鳥町の宿泊施設に送られる。でも仕方がない・・・。
 午前2時にエイドが閉鎖となり、白鳥町の新しいロッジに送られて午前3時ごろ到着した。他のリタイア者はすでに眠っていたので、僕もシャワーを浴びてすぐに眠った。

 翌朝、朝6時前からみんなが起きてきたので僕も起きた。いい天気だ。今日も暑くなりそうだ。とりあえず外を散歩してみるが、やっぱり歩くのも辛い。こんな状態ではあの先もまともに進むことはできなかっただろう。後悔などの気持ちは全然沸いてこなかった。リタイアしたという実感がないというのが正直なところだろう。
 この日は一日何もすることがなく、何もする気がしないので、だらだらとぼけーっと過ごした。

 翌日、記念植樹や表彰式があった。ここで完走したランナー達とようやく会うことができたが、みんなの笑顔を見たり話を聞いたりしていたら、こっちもうれしくなってきてしまった。やはり悔しい気持ちなどは全然沸いてこなかった。すっきり気持ちを切り替えられるかもしれない。改めて感じたのは、完走したランナー達の気持ちの強さだ。今回自分に足りなかったのはその部分だったかもしれない。
 終わってしまったことは仕方がない。今回の経験を必ず今後に生かしていきたいと思った。とりあえずしばらくはひと休みだ。


 記録

・チェックポイント(CP)、エイド通過時刻・タイム

エイド 場所 距離 到着時刻 経過時間
スタート 名古屋城 0km 6:15
No.6 岐阜市 30.0km 8:55 2時間40分
42.195km 約3時間45分
No.13 道の駅「美並」 67.2km 12:01 5時間46分
No.17 郡上八幡 85.3km 13:35 7時間20分
100km 約9時間
No.21(CP1) 白鳥町ふれあい広場 106.9km 15:58 9時間43分
No.25 ひるがの高原 128.4km 19:22 13時間07分
No.28(CP2) 荘川桜 143.0km 21:47
0:30リタイア
15時間32分
No.34(CP3) 道の駅「白川郷」 172.6km
No.42(CP4) 南砺市 212.0km
No.50(ゴール) 兼六園・佐藤桜 250.0km